俺、無謀にも初仕事で死地に突っ込むことになりました
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「星間海賊ギルドへようこそ。ご依頼ですか?」
カウンターの奥にいたのは、白と銀の制服を着た、やたらと美人な女性だった。
──なんか、思ってたのと違う。
俺の頭の中では、でかいソファにどっかり座った強面のおっさんが、
「よう新入りか、命が惜しけりゃ辞めとけ」みたいな展開を想定してたんだけど……
現実は、モデル顔負けの受付嬢が、営業スマイルで出迎えてくれるハイテク空間だった。
カウンターは強化ガラス製。後ろの壁にはでかいホログラムの地図が映ってて、各艦の状況がリアルタイムで更新されてる。
天井の照明もLEDどころか、なんか色がゆっくり変わるし。ここ、ほんとにギルドか?
──いや、マジでホテルのフロントと間違えそうだ。
でも、おっさんよりはこっちの方が断然いいので──これはこれで良し。
「あの、ギルドに登録に来たんですけど……」
受付嬢はにこやかに頷いた。
「登録ですね。では、こちらに――艦長名、艦船名、そして個人IDの提出をお願いします」
「個人ID……?」
一瞬、何のことか分からなかった。
「って、何ですか?」
その瞬間、受付嬢の表情が、ほんの少しだけ変わった気がした。
──あ、まずいこと聞いたか?
「個人IDは、生まれたときに発行される公式な個人識別コードです。銀河法における身分証明の基本になりますが……お持ちでない?」
「えっと……自分、スクラップ13で孤児やってまして。
その……そういったもの、作った記憶がないんですよね」
その瞬間、空気が少しだけ変わった。
受付嬢は微笑みを崩さずにいたが、何かを確認するように端末に視線を落とした。
ホログラフが淡く光る。
「……なるほど。失礼しました。ご安心ください、そういったケースも想定されています」
「え、まじで?」
「はい。スクラップ区画出身者や難民の方のために、仮ID登録という制度がございます。
一時的なIDですが、ギルド登録に必要な身分証としては有効です」
「なるほど……」
ホッとした反面、ちょっと悔しい気もした。
仮IDって響きは、なんだか“正式じゃない”って言われてるみたいだ。
──まぁ、それでも。
この宇宙で“誰か”として認められるなら、十分だ。
「こちらに、お名前と年齢、出身地をご記入ください。仮ID登録はそれで完了です」
「……それだけ?」
正直、拍子抜けだった。もっと面倒な審査とかあると思ってた。
「それだけです。ただし――」
受付嬢の声がわずかに低くなる。
「この仮IDには、有効期限があります。発行から3週間以内に、星間海賊ギルドでの実績証明が必要です」
「実績証明?」
「はい。依頼をこなし、報告を提出していただく必要があります。一定水準の戦闘、輸送、警護などの任務記録があれば問題ありません」
「え、でも……この前、海賊倒したんだけど……あれじゃダメ?」
「確認しました。ですが、あの戦闘ログはID発行“前”のものですね。申し訳ありませんが、適用対象外となります。ご了承ください」
「マジかよ……」
脳裏をよぎるのは、さっきの爆発音と、倒れていった敵艦の残骸。
あんな戦闘でも“無効”扱いされるのかよ……!
「ご安心ください。あなたの艦のスペックと戦闘記録を拝見した限り、3週間以内の実績取得は難しくないはずです」
そう言われても、内心ではちょっと焦りがこみ上げる。
──3週間。
その間に何も成し遂げられなかったら、俺の“存在”すらも、宇宙に認められないってことだ。
「わかった。やってやるよ。その間に、俺の名を宇宙に刻んでやる」
「ええ、期待していますよ。コウキ艦長」
「では続いて、艦船名の記入をお願いします」
「艦船名か……どうしようかな。えーと、じゃあ──ハイペリオンで」
たしか前世で“高みを行くもの”って意味だった気がする。
この船で、空のその先まで行ってみせるって誓いを込めるには、ちょうどいい。
「艦長名、コウキ。艦船名、ハイペリオン。確認しました。
──以上で、星間海賊ギルド仮登録を完了します」
あっさりしたものだな、と思ったのも束の間。
「ですが、くれぐれもお気をつけください。
仮IDの期限が切れた場合、ギルド登録は即時抹消となります。再登録は不可です」
一瞬、背筋が冷たくなった。
──つまり、この3週間が俺の“勝負”ってことだ。
「……わかりました。なるべく早く、実績作ってきます」
「お疲れさまでした。ギルドは、あなたの活躍をお祈り申し上げます」
笑顔でそう言う彼女の声は、まるで見送りの鐘の音のようだった。
「しかし、実績か……。違法海賊しばくのが一番手っ取り早いんだけど、ないかな?」
ギルドの端末をいじっていると、ちょうどいい感じの依頼が目に入った。
“違法海賊小隊のせん滅任務”。報酬は実績ポイント中ランク、緊急性高。
「ラッキー。これでいいや」
俺は迷いなくボタンを押し、依頼を受注した。
そしてそのまま、目標宙域──通称“ダストベルトZ9”へと向かう。
帰艦して、操縦席に腰を下ろした瞬間。
「艦長、あなたは馬鹿なのですか?」
ポンコツAIが開口一番に、無慈悲な言葉を投げつけてきた。
「おい、いきなりなんだよ失礼な!」
「失礼なのは艦長の判断です。受注された依頼は複数艦による合同戦闘が前提の危険任務。
当艦1隻では、生存確率42%。成功率に至っては──30%です」
「……マジかよ。ギルドの説明、そんなに詳しく見てなかったんだが」
「それを世間では、無謀と呼びます。
それとも艦長は、死亡フラグの収集癖でもお持ちですか?」
「うるせぇ……!行くって決めちまったもんは、行くんだよ!」
「……理解不能です。人間の脳構造は常に私の理解を超えています」
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