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猫騒動、無事終了?

評価&応援ありがとうございます!

何とか猫を確保した俺たちはヘッジホッグへと歩みを進めていた。しかし、そう簡単にはいかないようで……


「まてやコラ!猫置いてけ!」


「猫を引き渡して下さい」


そう、別の集団が猫目当てに俺たちを追いかけてきているのだ。


「走れ!ヘッジホッグまで戻れれば俺たちの勝ちだ!」


「にゃーん!」


「キョウカちゃん、猫放しちゃだめだからね!」


「はーい!」


……と言いつつ、キョウカは猫を頭に乗せて全力疾走中である。


「なんで頭に乗せてんの!? 落ちるだろ!?」


「おとなしくしてるから、だいじょうぶー!」


「よけい不安なんだが!」


背後では、武装した傭兵団がドタドタと追いかけてくる。


「逃がすかーっ!その猫、賞金首なんだぞ!」


「なんで猫に賞金ついてんだよ、間違ってるだろ宇宙!」


ドンッ!


「おい!ぶつかってくるなよ酒臭いぞ!こんな時でも酒かお前は!」


「ちがうってば! 非常時用非常時用!パック酒は命の水ぅ!」


「何の非常時だよ!!」


通路の先、ヘッジホッグの接舷通路が見えてきた。


『接舷トンネル開放。エアロック解除まで残り――二十秒』


「よし、そこまで走り抜けるぞ!」


「はあっ、はあっ……ねこちゃん、うごかないで……!」


キョウカが猫を押さえながら走る。


「放すなよ!諦めんなキョウカ!お前が希望だ!」


「えっ、そんな重たいセリフいま言う!?!?」


背後から、ついにドローン部隊が再起動し、レーザーサイトが天井を這う。


「ちょ、照準!照準がこっち向いてるって!?」


「マリナ、何かできないのか!?」


「……しょうがないっ!」


マリナが叫び、酒パックを全力で投げた。


「酒を!喰らえええええええええ!!」


不意打ちの酒パックがドローンのセンサーにヒット。スパークを起こし、ドローンが一斉にバランスを崩す。


「今だ、行けーっ!!」


俺たちは接舷トンネルに飛び込み、背後でドアが閉じると同時に、爆発的な閃光が響き渡った。


――そして。


「……はぁ……なんとか、間に合ったな……」


「やったああああああ!!」


キョウカが猫を高々と掲げ、猫は「にゃー」とまるで勝利の雄叫びのように鳴いた。


「……なんなんだ、俺たち……」


「宇宙海賊、なんだよね……?」


マリナが座り込みながら、パック酒をちゅーっと吸い込む。


「今回はマジで猫のほうが主役だったな……」


「まあ、これで任務は完了……でいいんだよな?」


猫が、俺の足元でドヤ顔を決めて「にゃん」と鳴いた。


――こうして、史上最も騒がしく、最も猫まみれな“極秘任務”は、なんとか幕を閉じた。


……たぶん。




「よし、さっさと引き渡して依頼完了だ。アイカ、ギルドへ向かうぞ。目的地をケルベロス・スロット宙域宇宙ステーションへ」


「了解。ケルベロス・スロット宙域宇宙ステーションへ向かいます」


「にゃーん」


「ヘッジホッグへの強制アクセスを確認。防御プロトコル発動……成功しました」


「あぶねぇ。油断も隙もねぇな、この猫。キョウカ、ケージに入れとけ」


「えー。ねこちゃんかわいそう」


「これ以上面倒はごめんだ。しまっとけ」


「はーい」


「これで、ひと段落、だよね?」


「もう大丈夫だろ。大丈夫だよな?」




星間海賊ギルドケルベロス・スロット支部……いつも覇気のない受付嬢がいるギルド支部だ。俺たちは捕まえた猫を届けに来たのだが……


「あぁ、……コウキさん、お疲れさまです。……猫の件ですよね。こちらで預かります。お疲れさまでした……」


「よろしく頼む。ケージからは出すなよ。何しでかすかわからないぞ」


「猫一匹にそんな警戒しなくても……」


「あんたは実際に被害を被ってないからそんなことが言えるんだよ……」


「わかりました……ケージからは出さないようにしときます……」


『ビー!ビー!火災です。消化システム、作動。外部へ避難してください』


「なんだ!?」


「えっ!?何!?」


「んー?」


「火事!?」


スプリンクラーが作動し、ギルド内に大量の水が降る。


「きゃー!」


「わー!」


ほどなくしてスプリンクラーは止まった。俺たちは全身びしょ濡れだ。


「なんだったんだ……」


「にゃーん」


猫がケージの隙間から尻尾で器用に端末を操作していた。


「ちょっと目を離したらこれか……」


「……これは大変っすね……」


「……ほんとにこれで任務完了なんだよな?」


俺がぼそっとつぶやくと、猫がケージの中で「にゃー」と満足げに鳴いた。


……いや、たぶん完了。たぶん。




ヘッジホッグ艦橋に戻った俺たちは、ギルド本部からの通信を受けていた。


『対象の捕獲、見事だった。感謝する』


「極秘ならもうちょっと情報に気を使ってくれよ……情報駄々洩れだったぞ」


『失礼した。以後、気を付けよう』


「本当にちゃんとしてくれよ……」


『……あれがよそに持っていかれてしまったら大変なことになるところだった。報酬は先ほど振り込んだ。補給支援は今後必要になったら行おう。しばらくはギルド持ちで補給できるように手配しよう』


「よろしく頼む。他に何かあるか?」


『以上だ。改めて、感謝する。機会があれば、またよろしく頼む。』


「今回みたいなのは御免だからな……」


――こうして俺たちの猫騒動は終結したのだった。


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