表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/68

俺、スポンサー獲得。そして宇宙海賊ギルドに登録してきます

評価&応援ありがとうございます!

「戦利品を確認するから、少し待っててくれ」


ナガタニにそう言い残し、俺は撃墜した艦の残骸へと向かう。


「さてさて……こっからが、俺の本業だ」


デブリが浮かぶ宇宙空間。回収アームを展開し、機体をゆっくりと近づける。


「ポンコツ、残骸のスキャン頼む」


「了解。戦闘艦の破片をスキャン中……資源反応3件。うち1件はCランクエネルギーセル、1件は低出力推進ユニット。そして……」


「そして?」


「希少鉱物の反応あり。貨物区画の残骸に微量存在。換金率、おおよそ1,800クレジット相当と推定されます」


「よっしゃ、大当たりじゃねぇか」


ガラクタの山から使える部品を選び、スロットに収納していく。不要なものは弾いて軌道から離脱させる。


「これは使える。これは……ゴミ。これは──へぇ、意外といいの拾ったな」


作業を終えて、再び通信を開く。


「待たせたな。戦利品も確保できた。目的地まで護送する」


「感謝する、コウキ艦長。頼りにしてるよ」


そんなふうに言われると、ちょっとだけ照れるじゃねぇか。


──こうして俺は、輸送船ナガタニを護衛しながら、目的地であるスクラップ11外周セクターへと向かうのだった。




スクラップ11外周セクター──

そこはこの辺境宙域では珍しく、まともに人の出入りがある商業地帯だった。


低軌道上には、次々と物資を積んだ輸送船が軌道待機しており、地表には巨大な宇宙港が広がっている。

ドックには多種多様な船がひしめき合い、エンジンの排気音と、荷降ろし用のクレーンの駆動音が混じっていた。


スラムのゴミ山育ちの俺からすると、まるで別世界だ。


「人、いすぎだろ……」


すれ違うのは、獣人、サイボーグ、異星種、そして武装した護衛兵まで。

喧騒と熱気が、全身にまとわりついてくる。


そんな中、輸送船ナガタニ艦長、チハラに案内されてやって来たのは、ナガタニを保有する、ユモトインダストリーの支社だった。


「ここが……?」


支社、って聞いてたから、もうちょっと雑居ビルみたいなもんかと思ってたけど──

目の前にあるのは、3階建てのしっかりした建物。入口にはセキュリティロボが立っていて、目だけが光ってこっちを監視していた。


「よく来てくれたな、コウキ艦長。礼を言いたくてな」


チハラが笑いながら俺の背中を叩いた。


「うちの荷が無事に届いたのは、お前のおかげだ。中で少し話せるか?」


「ま、まぁ、時間はあるけど……」


内心、正直ちょっとビビってる。

企業の建物なんて、生まれて初めて入るんだ。しかも、宇宙海賊を撃退した礼って話が、本当に礼だけで済むのか……少し、気になる。


──それが、ただの礼で終わらないってことを、この時の俺はまだ知らなかった。




「実は、支社長が君の戦闘ログを見て、いたく気に行ってね。うちの専属にならないかと交渉に来たんだよ。」


「専属、ですか?」


俺は思わず聞き返した。

だって、それってつまり──スポンサーがつくってことだよな?


「そう。専属と言ってもまぁ、スポンサーみたいなものだ」


チハラは椅子にもたれながら、どこか愉快そうに言った。


「うちの装備や補給品を使ってもらって、その代わりにちょっと宣伝してもらいたい。君は海賊になりに来たんだろう?なら、なおさらうちとしても目立つ存在に協力してほしいってわけさ」


「うちは艦も作っていてね。武装とか、シールドとか。しかしあまり売り上げが良くなくてね。なので、宣伝してもらいたいのさ。」


「……宣伝って、何を?」


「簡単なことだよ。艦にうちのロゴを入れるとか、うちの製品を使ってくれればそれでいい。戦闘中のログを公開してくれるなら、報酬も上積みしよう」


うそだろ……?


さっきまでスラムのゴミ山を出たばっかりの孤児が、

今じゃ企業スポンサーのつく宇宙海賊候補かよ。


「もちろん、断ってくれても構わない。ただ、その場合は──」


「いや、やります。やらせてください。喜んで」


即答だった。断る理由なんて、どこにもなかった。


「はは、即決か。いいね。じゃあ契約の内容はこっちにデータ送っておくから、一度目を通してくれ」


「了解っす」


そう答える俺の手元に、端末が渡された。契約書は、意外とシンプル。

そして驚くことに、契約金としてクレジット残高に──10,000クレジット。

これだけあれば半年は豪勢に暮らしても問題ない額だ。


「まじか……」


「これは前払いの一部ってとこだな。装備の補充や艦の強化に使ってくれ。次の仕事で、君がどこまでやれるか楽しみにしてるよ」


まるでゲームの中みたいな展開だけど──

これは、現実だ。


俺はとうとう、スポンサー付きの宇宙海賊として、第一歩を踏み出したんだ。




ギルドに登録に行くんだろう──と、チハラに教えられた。


案内されたのは、スクラップ11外周セクターにある《星間海賊ギルド》の支部だった。


──ちなみに、この世界の「海賊」は認可制だ。


宇宙海賊って聞くと、民間船を襲ったり財宝を奪ったり、ってイメージがあるけど……少なくとも、ギルドに所属してるやつらは違う。


民間船を襲うようなゴロツキは「違法海賊」扱い。

ギルドに属する者たちはむしろ、その討伐を請け負ったり、物資の輸送・護衛を引き受けたりと、準軍事的な活動をするプロ集団だ。


まるで、傭兵の宇宙版みたいなもんだな。


俺がさっき襲って倒したゴロツキどもも、言うなれば「海賊もどき」だったわけで──

ギルドに登録すれば、そういうやつらを合法的に狩って、報酬をクレジットでもらえるってワケだ。


そして俺はこれから、本物の海賊、になりに行く。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!


もし「続きが気になる」「ちょっと面白かったな」と思っていただけたら、

★評価・ブックマーク・感想など、どれかひとつでもいただけると励みになります!


あなたの応援が、物語をもっと広げてくれます!


次回もどうぞ、お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
英語では、合法的な海賊は「privateer」、違法な海賊は「pirate」と呼ばれるのが正確な表現かと思います。ご参考までに。
海賊って名称が違和感あるなぁ 賊自体が悪党って意味だから
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ