俺、スポンサー獲得。そして宇宙海賊ギルドに登録してきます
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「戦利品を確認するから、少し待っててくれ」
ナガタニにそう言い残し、俺は撃墜した艦の残骸へと向かう。
「さてさて……こっからが、俺の本業だ」
デブリが浮かぶ宇宙空間。回収アームを展開し、機体をゆっくりと近づける。
「ポンコツ、残骸のスキャン頼む」
「了解。戦闘艦の破片をスキャン中……資源反応3件。うち1件はCランクエネルギーセル、1件は低出力推進ユニット。そして……」
「そして?」
「希少鉱物の反応あり。貨物区画の残骸に微量存在。換金率、おおよそ1,800クレジット相当と推定されます」
「よっしゃ、大当たりじゃねぇか」
ガラクタの山から使える部品を選び、スロットに収納していく。不要なものは弾いて軌道から離脱させる。
「これは使える。これは……ゴミ。これは──へぇ、意外といいの拾ったな」
作業を終えて、再び通信を開く。
「待たせたな。戦利品も確保できた。目的地まで護送する」
「感謝する、コウキ艦長。頼りにしてるよ」
そんなふうに言われると、ちょっとだけ照れるじゃねぇか。
──こうして俺は、輸送船ナガタニを護衛しながら、目的地であるスクラップ11外周セクターへと向かうのだった。
スクラップ11外周セクター──
そこはこの辺境宙域では珍しく、まともに人の出入りがある商業地帯だった。
低軌道上には、次々と物資を積んだ輸送船が軌道待機しており、地表には巨大な宇宙港が広がっている。
ドックには多種多様な船がひしめき合い、エンジンの排気音と、荷降ろし用のクレーンの駆動音が混じっていた。
スラムのゴミ山育ちの俺からすると、まるで別世界だ。
「人、いすぎだろ……」
すれ違うのは、獣人、サイボーグ、異星種、そして武装した護衛兵まで。
喧騒と熱気が、全身にまとわりついてくる。
そんな中、輸送船ナガタニ艦長、チハラに案内されてやって来たのは、ナガタニを保有する、ユモトインダストリーの支社だった。
「ここが……?」
支社、って聞いてたから、もうちょっと雑居ビルみたいなもんかと思ってたけど──
目の前にあるのは、3階建てのしっかりした建物。入口にはセキュリティロボが立っていて、目だけが光ってこっちを監視していた。
「よく来てくれたな、コウキ艦長。礼を言いたくてな」
チハラが笑いながら俺の背中を叩いた。
「うちの荷が無事に届いたのは、お前のおかげだ。中で少し話せるか?」
「ま、まぁ、時間はあるけど……」
内心、正直ちょっとビビってる。
企業の建物なんて、生まれて初めて入るんだ。しかも、宇宙海賊を撃退した礼って話が、本当に礼だけで済むのか……少し、気になる。
──それが、ただの礼で終わらないってことを、この時の俺はまだ知らなかった。
「実は、支社長が君の戦闘ログを見て、いたく気に行ってね。うちの専属にならないかと交渉に来たんだよ。」
「専属、ですか?」
俺は思わず聞き返した。
だって、それってつまり──スポンサーがつくってことだよな?
「そう。専属と言ってもまぁ、スポンサーみたいなものだ」
チハラは椅子にもたれながら、どこか愉快そうに言った。
「うちの装備や補給品を使ってもらって、その代わりにちょっと宣伝してもらいたい。君は海賊になりに来たんだろう?なら、なおさらうちとしても目立つ存在に協力してほしいってわけさ」
「うちは艦も作っていてね。武装とか、シールドとか。しかしあまり売り上げが良くなくてね。なので、宣伝してもらいたいのさ。」
「……宣伝って、何を?」
「簡単なことだよ。艦にうちのロゴを入れるとか、うちの製品を使ってくれればそれでいい。戦闘中のログを公開してくれるなら、報酬も上積みしよう」
うそだろ……?
さっきまでスラムのゴミ山を出たばっかりの孤児が、
今じゃ企業スポンサーのつく宇宙海賊候補かよ。
「もちろん、断ってくれても構わない。ただ、その場合は──」
「いや、やります。やらせてください。喜んで」
即答だった。断る理由なんて、どこにもなかった。
「はは、即決か。いいね。じゃあ契約の内容はこっちにデータ送っておくから、一度目を通してくれ」
「了解っす」
そう答える俺の手元に、端末が渡された。契約書は、意外とシンプル。
そして驚くことに、契約金としてクレジット残高に──10,000クレジット。
これだけあれば半年は豪勢に暮らしても問題ない額だ。
「まじか……」
「これは前払いの一部ってとこだな。装備の補充や艦の強化に使ってくれ。次の仕事で、君がどこまでやれるか楽しみにしてるよ」
まるでゲームの中みたいな展開だけど──
これは、現実だ。
俺はとうとう、スポンサー付きの宇宙海賊として、第一歩を踏み出したんだ。
ギルドに登録に行くんだろう──と、チハラに教えられた。
案内されたのは、スクラップ11外周セクターにある《星間海賊ギルド》の支部だった。
──ちなみに、この世界の「海賊」は認可制だ。
宇宙海賊って聞くと、民間船を襲ったり財宝を奪ったり、ってイメージがあるけど……少なくとも、ギルドに所属してるやつらは違う。
民間船を襲うようなゴロツキは「違法海賊」扱い。
ギルドに属する者たちはむしろ、その討伐を請け負ったり、物資の輸送・護衛を引き受けたりと、準軍事的な活動をするプロ集団だ。
まるで、傭兵の宇宙版みたいなもんだな。
俺がさっき襲って倒したゴロツキどもも、言うなれば「海賊もどき」だったわけで──
ギルドに登録すれば、そういうやつらを合法的に狩って、報酬をクレジットでもらえるってワケだ。
そして俺はこれから、本物の海賊、になりに行く。
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