楽園で、ひと休み
評価&応援ありがとうございます!
「やっと着いた~!」
軌道エレベーターに揺られること約30分。俺たちは地上の船着き場へと到着した。
「うみ! きれい! すごい!」
キョウカは目を輝かせ、大はしゃぎだ。
「キョウカさん、海に落ちないように、手をつなぎましょう」
「軌道エレベーターをご利用いただき、ありがとうございました。ここからは船での移動となります。快適な船の旅をお楽しみください」
機械音声が案内を告げる。俺たちはそれに従い、移動用の船へと向かった。
「コウキ様、こちらの船で島までお送りします。所要時間はおよそ一時間。どうぞごゆっくりおくつろぎください」
先導するサポートアンドロイドの後に続き、俺たちは船内へ乗り込む。エンジンが静かに唸り、船はゆっくりと動き出した。
潮の香りと海風を感じながら、非日常の始まりを──俺はあらためて実感するのだった。
「ぷは~! 美味い!」
「何飲んでんだよ。どこから出した?」
「そこのクーラーボックスに入ってたよ~。ビール最高~!」
「船酔いするぞ」
「だいじょ~ぶだいじょ~ぶ! このくらいの揺れで酔わないってば~」
──数十分後──
「うっぷ、吐きそう……」
「だから言っただろうに」
「マリナおねえちゃん、だいじょうぶ?」
「氷を口に含むと、酔い止めになるそうです」
「……それ早く言ってよぉ……うぅ、アイス食べたい……」
「さっきまでビールで“ぷは~”とか言ってたやつのセリフじゃねぇな」
「だまれー……波が悪い……っていうか、もう限界……」
「おい、吐くなら袋にしろ」
「お待たせいたしました。エチケット袋になります」
「ありが……うっぷ、お゛え゛え゛え゛え゛」
「汚ぇな……」
──リゾートの入り口にして、マリナのバカンスはすでに波乱含みだった。
「地面が……揺れる……」
「おねえちゃん、ちょっとくさい」
「マリナさん、まずはシャワーを浴びることを推奨します」
船着き場からぴったり一時間。一名ダウンしたものの、俺たちは無事に島へとたどり着いた。
「ここ、まるごと貸し切りか。……すげぇな」
そんな俺たちを、現地のサポートアンドロイドが出迎える。
「お待ちしておりました、コウキ様。アイランド・3へようこそ。今回のご利用プランについて、説明は必要でしょうか?」
「頼むわ」
「はい。今回のプランは、この島をまるごと貸し切り、自由にお使いいただける内容となっております。飲食、設備利用、道具のレンタルなど、すべてプラン料金に含まれておりますので、追加の費用は一切発生いたしません。どうぞ、ご自由に──思いきり楽しんでください」
「さすが高いだけあるな。まさに至れり尽くせりってやつだ」
「ありがとうございます。何かございましたら、島内に常駐しているサポートアンドロイドにお申しつけください。では、良いバケーションを」
そう言い残して、アンドロイドは静かに去っていった。
……何をしてもいい、って言われると、逆に困るんだよな。こういうの。
「飲み放題~! やっふ~!」
「とりあえずマリナはシャワー浴びてこい。そこにあるから」
「すぐ戻るから、あたし置いていかないでよ?」
「わかったよ。待っててやるから早く行ってこい」
「は~い」
そう言って、マリナはシャワーへと向かった。
──数分後。
「おまたせ~!」
「もう大丈夫なのか?」
「シャワー浴びたらすっきりした! もうぜんっぜん平気!」
「テンション高いな……」
「そりゃ高くもなるよ! リゾートでバカンスだよ? 楽しまなきゃ損でしょ!」
「とりあえず、飯にしよう。さすがに腹減ったぞ」
「その前に水着選ばない?せっかくだし水着でご飯食べようよ。リゾートっぽく」
「……それもそうだな。ちゃっちゃと選んで、飯にするぞ」
「りょーかい!」
──俺は知っている。
こういうとき、絶対“ちゃっちゃと”では済まないってことを。
女三人寄れば姦しい、とはよく言ったものだ。
マリナ、アイカ、キョウカの三人で、「これ可愛い」「あっちも可愛い」と、なかなか水着が決まらない。
俺? 普通にサーフパンツにしたよ。数分で決まりました。
「まだか~?」
「もうちょっと待ってー!」
「いい加減腹減ったんだけど……」
「コウキはさ、女の子の扱いがなってないよね~」
「ほっとけ」
──待つこと数十分──
「おまたせ~!」
「やっと決まったのか?」
「うん! ここすごいね。身体スキャンして、自動でぴったりサイズの水着を出してくれたよ!着替えるからちょっと待ってて」
「お、おう」
「おにいちゃん、かわいいみずぎ、いっぱいあったよ!」
「私にベストな水着を発見しました。ご期待ください」
「じゃ~ん!どう?」
まず出てきたのはマリナ。白のビキニにデニムのホットパンツ。アル中ダメ女だが、やっぱり可愛い。なんかむかつく。
「おにいちゃん、どう?」
キョウカは緑色のワンピースタイプ。子供らしくて可愛らしい。
「艦長、どうでしょうか。」
アイカは黒のビキニ。シンプルだが、良く似合っている。
「艦長の心拍上昇を確認。照れてますね」
「うっせえ」
「……っていうか、アイカ。お前、海水とか大丈夫なんだっけか?」
「問題ありません。私は完全防水仕様です。ご安心ください」
「やっと飯が食える……」
「リゾートと言えば──バーベキュー! そしてお酒!」
「おにく! おさかな!おいしそう!」
「焼きそば……興味深いです。鉄板調理による風味の違いを分析してみます」
海辺に並ぶ屋台では、炭火の香りが風に乗って広がっている。どこもかしこも、腹が減った人間にはたまらない誘惑だ。
「すいませーん、肉盛り合わせ一丁とビール!」
「カレーライス!」
「私は、シーフードセットと……ノンアルコールビールをください。艦長、焼きとうもろこしはご所望ですか?」
「おう、頼む。あとラーメン」
思い思いに注文した食事が、次々と屋台から運ばれてくる。
「うお、肉がジュウジュウいってる。これだよこれ!」
「この焦げたソースの風味……記録しました。再現可能です」
「おにくも、おいし~!この白いの、なんのおにく? ぷにぷにする!」
「それはたぶんホルモン……キョウカにはちょっと早いかもな」
「だいじょうぶ、おいしい!」
「うん……このノンアルビール、意外と再現度が高いですね。苦みと爽快感は十分にあります」
「アイカ、お前も飲むようになったのか……」
「マリナさんに付き合っているうちに。ご希望でしたら泥酔モードも起動できますが」
「やめてくれ。酔っぱらいの面倒見るのはごめんだ」
「わー、もう最高~。ビールが止まらん!」
「お前はまた吐くなよ……」
海風に吹かれながら、炭火の香りと笑い声が混ざる。
──これぞ、バカンスの昼メシってやつだ。
――まだまだ、俺たちのバカンスは終わらない。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
もし「続きが気になる」「ちょっと面白かったな」と思っていただけたら、
★評価・ブックマーク・感想など、どれかひとつでもいただけると励みになります!
あなたの応援が、物語をもっと広げてくれます!
次回もどうぞ、お楽しみに!




