表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/63

初陣、宇宙海賊予備軍!

評価&応援ありがとうございます!

「さて、宇宙に上がったのはいいものの、どうしたもんかね」


俺はシートに背中を預けたまま、虚空を見上げて呟いた。

目の前には、見たこともない無重力の青黒い世界。だが今の俺には──


「金もなし、飯もなし、ついでに燃料も“今あるだけ”。ないない尽くしだな、こりゃ」


正真正銘の無計画出発である。

浮かれてはいたが、このままだと数時間後には酸欠で窒息してる未来すら見える。


そんな俺の愚痴に、例のポンコツAIが、涼しい声で返してきた。


「でしたら、ここから少し先に、宇宙海賊の拠点があります。そこで賞金でも稼いでみてはどうでしょう」


「はあ?海賊って……それ危なくない? 一隻で突っ込んで、返り討ちじゃ洒落になんねぇぞ」


「問題ありません。当艦は完璧です。それに海賊といっても、登録も許可も受けていない非正規のゴロツキどもです。

 いわば“海賊もどき”。組織力も火力も、当艦一隻で十分排除可能です」


「ほんとかよ……お前の“完璧”って信用ならねぇんだよな」


少し考える──というか、他の選択肢がマジでない。


「まあ、他に案もないし……行ってみるか」


「了解しました。航路を変更。推進システム最大20%、最適経路で目標座標へ進行します」


エンジン音が一段階低く唸り、船体がゆっくり旋回を始める。

正面のスクリーンには、赤いマーカーで囲まれた未登録宙域が表示された。


「そういえば、ギルド未加入の海賊ってさ、普通は正規軍の討伐対象なんじゃねぇの? なんで野放しなんだ?」


「艦長。そんなド辺境の無名宙域に、貴重な戦力を割いて討伐に来ると思われますか?」


「……あー。たしかに。ここじゃ、軍隊呼ぶより宇宙クジラ見つけるほうが早いかもな」


「的確な皮肉ですね、艦長。お褒めします」


「褒めるな。腹立つ」




そうこうしてるうちに、宇宙海賊が根城にしている宙域が目前に迫った。

スキャナーに映る赤い点が、じわじわと増えていく。


「艦長。戦闘行為が確認されました。どうされますか?」


「戦闘? ……海賊か?」


「肯定です。輸送船2隻が、武装艦3隻から攻撃を受けています」


「タイミング最悪、いや──最良か。賞金のほかに“感謝料”なんてのも転がり込むかもしれねぇな」


俺はニヤッと笑ってから、操縦席に深く腰を沈めた。


「行ってみるか」


「了解。これより、輸送船の救援、および敵性武装艦への迎撃を開始します」


AIの声が終わると同時に、艦が振動を上げながら加速した。


スターシールドが展開され、視界の端に防御インジケーターが並ぶ。

本格的な戦闘モードに入るのは、これが初めてだった。


「こちら、えーっと……助っ人だ。そこの輸送船2隻、武装艦はこっちで引き受ける。お前らはひたすら逃げろ!」


回線を開き、即興で通信を飛ばす。若干声が震えてたのは、きっと気のせいだ。


『こちら輸送船ナガタニ。援護、感謝する。──た、頼む!』


「了解──それじゃあ、行きますか」


目の前に現れる敵艦のシルエット。いずれも中古の武装船だが、火力は侮れない。

機銃を備えた艦体が、俺の船を目視した瞬間、こちらに砲口を向けてきた。


「おっと……やる気だな」


「迎撃シーケンス開始。敵艦をロックオン──完了。武装:パルスレーザー、EMPチャフ、誘導弾1基。出力調整、完了」


「じゃあ──まずはお手並み拝見ってことで!」


「脳波コントロールシステム作動、操縦権を艦長に移譲」


俺が声を上げた瞬間、AIが補助をし、操縦をを開始する。船体が滑らかに傾き、旋回して敵の側面へ回り込む。

次の瞬間──


「発射」


青白い光線が艦体前部から放たれ、敵艦の側面に命中。シールドがきらめき、瞬間的に熱が走った。


「直撃。敵艦の装甲にダメージ。カタパルト異常検知、推進機能に損傷」


「1隻目、足止め完了──次!」


敵艦も反撃してきた。赤いビームがこちらへ飛んでくる。

だが、AIは寸前でそれを予測し、船体をロールさせて回避。


「くっ……! Gが……!」


シートが体を押し潰すように重くなる。吐きそうだ。

だけど、負けてたまるか。俺は叫ぶ。


「もう1発!追撃いけ!!」


「了解。目標照準──発射」


2発目のパルスレーザーが火を吹き、敵艦の機関部を直撃。炎をあげてスピンしながら宙域を漂い始めた。


「敵艦2、戦闘不能。残り1隻──急接近中」


──まだ終わらない。


「……よし、こっからが本番だな」




敵艦の一隻が、急旋回しながらこちらの側面を取ろうとする。

速度と角度、両方を読んだ動き──これはただの雑魚じゃない。


「……操艦がうまいな。あいつ、リーダー格か?」


「高確率でその可能性があります。搭載兵器も他の個体より高性能です。警戒を」


機体を揺らすような振動と共に、敵のビームがこちらのシールドをかすめた。

熱と圧力で警告灯が瞬く。俺は歯を食いしばる。


「でも──わかったよ。さっきので、はっきりした」


この艦は──強い。


パルスエンジンが火を吹き、重力制御が限界まで作動する。

機体がスライドしながら宙域を抜け、敵の死角へと回り込んだ。


「今だ、撃て!」


「拡散弾、発射」


──ドゥンッ。


まるで腹の底に響くような重低音。

そして、数瞬の静寂ののち──敵艦の機体が破裂するように爆散した。


閃光と金属片が宇宙空間に咲き乱れ、まるで火の粉のように散っていく。


「……今の、何?」


「拡散弾です。複数の高密度弾頭を射出し、至近距離で一斉に爆破。

 一発でも命中すれば、艦体に致命的ダメージを与えられます」


「そんなヤバいもん、最初に言えよ……」


「使用条件:近距離戦。命中率が保証されないため、非推奨兵器として登録されていました。

 ですが、艦長の判断により、最適な場面で使用できたと考えます」


「……おだててんのか、ディスってんのか分かんねぇな、お前は……」


通信には、すでに撤退中の輸送船から安堵の声が入ってくる。


『こちらナガタニ。武装艦、沈黙を確認……助かった、本当にありがとう……!』


『もうダメだと思ってた! そっちの船、どこの傭兵だ!?』


「俺は……そうだな──」


──今、ここで名前を名乗れば、「伝説」はここから始まる。


「……宇宙海賊予備軍、コウキ艦長ってところだ」


笑い混じりにそう返すと、AIがささやくように告げた。


「戦闘記録、保存完了。戦績データ、ギルド登録可能範囲に達しました」


「へぇ……じゃあ、ギルドの試験資格も得たってことか?」


「肯定。艦長は、正式な宇宙海賊への第一歩を踏み出しました」


「よし──この調子で、俺は成り上がってやる」


ぐっと拳を握る俺の前に、再び星の海が広がっていた。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!


もし「続きが気になる」「ちょっと面白かったな」と思っていただけたら、

★評価・ブックマーク・感想など、どれかひとつでもいただけると励みになります!


あなたの応援が、物語をもっと広げてくれます!


次回もどうぞ、お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ