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キョウカ、はじめてのお買い物

評価&応援ありがとうございます!

「アイカ、レールキャノン、発射」


「了解。発射します」


ドゴン、と音を立て、レールキャノンが敵艦に直撃。船体を貫通したそれは爆散し、燃え殻のような残骸が宇宙に舞った。


「よし、これで依頼は達成だな」


「肯定です。目標宙域の違法海賊、せん滅完了しました」


「マリナ、戻っていいぞ」


「了解。ハイペリオン帰還しま~す」


「しっかし、数が多すぎる。いったい何隻落としたんだよ。いい加減飽きてきたぞ」


「先ほどの艦を含めて142機撃墜しました。燃料、弾薬、補修などの経費を差し引いても、ヘッジホッグ購入の代金をペイしました」


「そんなにか。ずいぶん稼いだな」


「これでも依頼の数は半分以上残っています。実質、独占状態です」


「……まぁ、独占できてるのは今のうちだけだろうな。稼げると分かれば、他も嗅ぎつけてくる」


「宙域の脅威度が下がったので、予測では、あと数週間以内に他ギルド艦の進出が始まると見られます。効率良く狩るなら、今が勝負どころです」


「了解。マリナ、補給終わったら次の座標だ。まだ稼げるうちに、荒らせるだけ荒らすぞ」


「はーい、ついでにお酒買って帰っていい?」


「お前それしか頭にねぇのか……」


こうして今のところ順調に稼いできてる。疲れはあるが、心地いい疲れだ。働いたぶん報酬として返ってくるのが楽しい。

けれど……翌日


「さすがに疲れた。明日は休みにしよう」


「艦長の疲労度を確認……それがベストな判断です」


「さて、休みはどうするかね……」




マリナの買い物に行きたい!との一声により、総出で買い物へと出向くことになった。


「とりあえず、服と、お酒と、お酒!」


「やっぱ酒かよ……」


「おさけ……くさい」


「アルコールの過剰摂取は脳に有害です。それに、キョウカさんが明確に嫌がっています」


「いーじゃん!ギャンブルからは足洗ったんだし、これが唯一の楽しみなの!」


「……“唯一”って自分で言うなよ。もっとこう、健全な趣味とかにしろよ」


「たとえば?」


「……盆栽とか」


「艦内で枯れたら泣くやつじゃん、それ!」


そんなやりとりをしながら、俺たちはステーションの商業区へと足を運んだ。


ケルベロス・スロットの商業エリアは、狭いながらもいろいろと揃っている。軍払い下げ品のパーツ店、古着屋、謎の調味料専門店、そして――


「ほらあった、酒屋ぁ~! 今日のあたしは最強よ!」


マリナが歓喜の声をあげながら、ダッシュで店に駆け込んでいく。


「……まったく、あいつは酒の時だけ機動力高いな」


「おにいちゃん、あれ……おさけのおみせ?」


「そうだ。……そして、あそこが最も近づいてはいけない場所だ」


「うん。おねえちゃん、へんなかおしてた」


一方、アイカはというと、すでに周辺の治安状況をスキャンして警戒モードに入っていた。


「艦長、店の前にたむろしている酔っ払い三名、持っている瓶は割れやすいガラス製。接触しないよう注意を」


「……もうそれ、ほぼボディーガードだな、お前」


「私はAIです」





「ずいぶんと買い込んだな。それどうするんだ?」


「運搬ドローンにお願いするよ~。さすがにこの量はムリムリ」


「しかしお前、金持ってんのか?いつも酒に使ってる気がするが……」


「だいじょーぶ!ちゃんと働いてるもん。取り分2割でも、あんだけ落とせばけっこう入るし」


「ならいいが。金無くなっても貸さないからな」


「え゛っ!?ほんのちょっと、ちょーっとだけなら……!」


「ダメだ。1クレジットも出さん」


「ケチ~!しぶちん艦長~!お前なんか、つまらん男だよ~!」


「マリナおねえちゃん、おさけかったの?」


「うんっ!もうお酒は満足!次はぜーったい、かわいいお洋服ねっ」


「おようふく……みたい!」


「キョウカさん、はぐれないように手をつなぎましょう」




次に訪れたのは服屋。主にキョウカの服を買う予定だ。


「これ、可愛くない?」

そう言ってマリナが持ってきたのは、白のワンピース。ピンクのリボンがアクセントになっていて、まさに子供向けの可愛らしいデザインだ。


「かわいい……すき!」


「じゃあ試着してみようね~♪」

マリナはキョウカの手を引いて、試着室へ消えていく。


しばらくして──


「じゃ~ん!どう?かわいいでしょ?」


キョウカが照れくさそうに、でも嬉しそうに姿を見せる。


「よく似合ってるぞ、キョウカ」


「映像データ記録中……完了」


「えへへ~」


顔を赤らめながら、キョウカはワンピースの裾をちょん、とつまむ。無意識にくるりと回るその姿は、確かに“普通の女の子”だった。


 


「キョウカさん、次はこれなんてどうでしょうか」


そう言ってアイカが持ち出したのは、セーラー服調の上下セット。どこか懐かしさを感じさせるデザインだが、子供服としての完成度は高い。


「これも……かわいい!」


「じゃあ、今度は私と一緒に着替えましょう。お手伝いします」


アイカはキョウカの手を取って、試着室へ向かう。


数分後──


「完璧です。キョウカさんの愛らしさを100%引き出すことに成功しました」


「……やけに自信あるな」


「映像データ、再記録中。笑顔強化タグ:付与完了」


「それ、なんか怖いタグついてない……?」


「でもほんと、似合ってるよ、キョウカ」


「えへっ」


 


「さっきから“似合ってる”しか言ってないじゃん」


マリナが半ばあきれたように笑う。


「本当に似合ってるから、それでいいんだよ」


「……そーいうの、ちょっとズルい」


マリナはぽそっと言いながら、棚から次の服を物色し始めた。


「さて……次は、ちょっと大人っぽいのも着せてみようかな~?」


「それはお前の趣味だろ」


「ばれたか~」


 


──そんな感じで、俺たちの“休暇”は、思いのほか穏やかに過ぎていった。




「おようふく、わたしもえらびたい!」


キョウカはぴょん、と小さく跳ねるように言ってから、子供服コーナーに走り出した。


「おいおい、勝手に──アイカ、付き添ってやれ」


「了解。追跡モード、起動します」


アイカはすぐさまスタスタと後を追っていく。


「……大丈夫かな?」


「アイカがついてるし、なんとかなるだろ」


 


──数分後。


「えらびました!」


キョウカが抱えてきた服を見た俺とマリナは、思わず沈黙した。


「な、なんだこれ……?」


それは──タコか、いやクラゲか?

もはや分類不能な、もふもふした触手つきの全身着ぐるみだった。鮮やかな青紫で、触手の先にはぬいぐるみ風の吸盤までついている。


「かわいい!」


キョウカはふんす、と鼻を鳴らしながら満面の笑み。


「こういうのも悪くないですね。この触手がキョウカさんの愛らしさを最大限に引き立ててくれます」


アイカが、何かを完全に信じ切った目で頷いている。


「AIのセンスがわからない……」


「うわー、でもこれ絶対……変な方向にバズるやつ……」


「……買ってくのか?」


「かう!」


即答。


「そっか……じゃあもう、止める気失せたわ……」


「おねえちゃんたちも、きぐるみきる?」


「遠慮しとくよ……」


 


そんな感じで、キョウカの“初・自分で選んだ服”は、若干(かなり?)独特なものとなった。




こうして、“宇宙での普通の買い物”は、ちょっとだけ奇妙で、ちょっとだけ暖かく終わった。

そして俺たちの“新しい日常”は、まだ始まったばかりだ。


さて、次は何処へ行こうか。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!


もし「続きが気になる」「ちょっと面白かったな」と思っていただけたら、

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次回もどうぞ、お楽しみに!

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