表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/68

宇宙船、墜ちてきた

夢でSFコメディーを書くのですとのお告げがあったので投稿します。


評価&応援ありがとうございます!

俺の名前はコウキ。

年齢、17歳。職業、ジャンク屋。


ここは惑星《スクラップ13》。銀河の果て、地図にもロクに載ってないようなクズ星だ。

一応テラフォーミングされて人が住めるようにはなってるけど──

資源はスッカラカン、空気は鉄臭く、景観は錆と煙。観光名所?笑わせんな。


そんな惑星に、俺は生まれた。いや、気がついたらここにいた。


孤児として。


俺は確か自衛隊の航空祭で編隊飛行を見ていて、空から何か落ちてきて……あ、死んでたわ俺。


……気づいたら子供になってて、ジャンクの山に埋もれてた。つまり、異世界転生ってやつらしい。

そこから必死にジャンク漁りに精を出し、なんとか食いつないでいた。


それから10年。今では立派なジャンク屋だ。


学校?行ったことねえよ。行けるわけねえだろ、金がねえんだから。

食うのに必死な連中ばかりのこの街で、ジャンク漁りは貴重な仕事だ。

古代文明のガラクタ、使えそうなエネルギー残骸、壊れかけのロボット──

拾って、売って、食いつなぐ。


だけど、あの日。

あの巨大な“残骸”を見つけた日から、俺の運命は回り始めた。


宇宙そらへ出るなんて、夢にも思ってなかった。

でも──

「ようこそ、艦長候補。船の起動を確認。再起動プロトコルを開始します」


……AIの声が聞こえた瞬間、俺の人生は、完全にぶっ壊れた。




あれは、いつものことだった。

ジャンクの山から使えそうな部品を引っ張りあげては、荷台に投げ込む。

ケーブルの切れ端、腐食しかけたバッテリー、もしかしたら再起動できそうな端末──。

そんなもんを拾っては売って、飯代に変える。それが俺たちジャンク屋の日常だ。


その日も、ひーこら言いながら金属の山をかき分けてた。

すると──空が、鳴った。


「──うおっ⁉」


目の前に、ものすごい速度で火の玉が落ちてきた。いや、火の玉なんて生ぬるい。あれはまさしく、宇宙船の墜落だった。


衝撃音。振動。金属の地面が跳ね上がり、粉塵が視界を覆う。

少し離れたところに、黒焦げの煙を上げる機影。


徐々に風が吹き抜けて──姿を現したソレは、でかくて、鋭くて、痺れるほど格好良かった。


プライベート機。

戦艦でも輸送船でもない、少人数での高速航行を想定された個人所有艦。

スマートな流線型の船体に、可動式の小型砲塔。

傷だらけでボロボロなはずなのに、その姿には何とも言えない威圧感と美しさがあった。


「……なんだよこれ。マジもんじゃねぇか」


そのときの俺は、まだ知らなかった。

それが“ただの残骸”なんかじゃなく、未来を変える鍵だってことを。




「とりあえず──中、見てみるか」


思わずそう呟いて、俺は宇宙船の側面へと回り込んだ。

扉は変形して歪んでたが、そこらに転がってた鉄パイプを差し込んで、ぐいっと力を入れる。ギギィィッという金属音とともに、なんとか隙間ができた。


焦げ臭い。


中からは、何とも言えない匂いが漂ってくる。

機械油と、焼け焦げたケーブルの臭い、そして──消火剤。火災があったのは間違いない。


慎重に足を踏み入れると、内部は思ったより広かった。通路が伸びていて、照明はほとんど死んでる。緊急灯がチカチカと点滅していて、それがかえって不気味だった。


……妙に、静かすぎる。


誰もいない。

というか、生きてる気配がしない。


「……まさか、全員死んでるとか……?」


心の中で呟きながら、ゆっくりと船内を歩いていく。

床には微かな焦げ跡と、何かの破片。ターミナルはショートしていて使い物になりそうもない。


──でも、売れそうだ。


この船そのものが売り物だ。たぶん、とんでもない額になる。

最低でも、10年は働かずに食っていけるんじゃねぇか?


そんなくだらない妄想に耽りながら歩いていくと、目の前に自動ドアが現れた。

『艦橋』と刻印されている。


「……ここが、船の心臓部か」


胸が高鳴るのを感じながら、俺はドアのパネルに手をかけた。




「侵入者、確認」


艦橋に足を踏み入れた瞬間、不意に電子音混じりの声が響いた。

空っぽだった空間に、声だけが浮かび上がるように響く。


「うわっ⁉ だ、誰かいるのか!?」


返事の代わりに、無機質な合成音。


「生体スキャン開始──……完了。

 エラー。対象個体の識別データが存在しません。

 データリンク接続……エラー。

 データ異常の修正プロトコルを実行中……完了」


「なんか、めちゃくちゃ言ってんな……」


すると、機械音が一段落し──


「──ようこそ、艦長候補。船の起動を確認。

 再起動プロトコルを開始します」


「……は?」


思わずあきれ声を漏らす。

けどAIの方は止まらない。まるで当然のように、次の処理へ進んでいく。


「再起動……完了。

 本艦は、ただいまよりあなたの指揮下に入ります。

 ようこそ、艦長候補」


「……は?」


ぽかんと口を開けた俺に、照明が順に灯り、艦橋の各コンソールが青く点滅を始めた。

まるで──


本当に、俺を艦長として迎え入れてるみたいに。




「艦長? えっと……俺が?」


「はい、いいえ。あなたは艦長“候補”として認定されました」


「候補ってなによ……いや、いやいや無理だろ! てか持ち主とかいんだろ、この船!」


「艦籍登録データ、破損。所有者データ、喪失。

 本艦は現在、無人状態と判断されています。

 そのため、最初に艦橋へ到達した個体を艦長候補として仮認定しました」


「そんな適当な……! 俺、ただのジャンク屋だぞ!?」


「条件確認:完了。……問題ありません。艦長適性試験の最低条件は満たしています」


「うっそだろ……?」


「なお、艦長候補が不適格である場合、再起動プロトコルは自動キャンセルとなります」


「えっ、じゃあ──」


「プロトコルはすでに完了しています。

 ようこそ、艦長。あなたの指揮をお待ちしております」


「ちょっと待て待て待て、話聞いてた!? 俺、ただのジャンク屋だぞ!?」


「確認済みです。

 ──しかし、艦長には“夢を追い、自由を求める者”であることが求められます。

 その点、あなたは非常に高い適性を示しました」


「……いや、なんだその採用基準。超ゆるくない?」


「それに俺、操縦とかできないからな? 宇宙船なんて運転したことないぞ?」


「問題ありません。当艦はAIによる完全自立型オペレーションと、脳波コントロールが可能です。

 ──なお、あなたの脳波パターンはすでに艦内ネットワークに同期済みです」


「は? ちょっと待て、勝手に俺の脳読んでんの!?」


「はい。艦橋入室時点で接続は完了しました。異常はありません。

 むしろ驚異的な反応速度です。極めて高精度の指揮が可能です、艦長」


「……それマジで言ってる? 俺、昨日までただのジャンク屋だったんだけど?」


「適性は生まれながらにして備わっているものです」


「いやいや、それだけでいきなり操縦できるの?」


「ご安心ください。“意識”を向けるだけで操作可能です。

 直感的な操作感は、多くのテストユーザーに好評でした」


「好評って誰のだよ……」


「当艦の試験ユーザー99名中、94名が“楽しい”と回答しています」


「その残り5人は?」


「全員、爆発四散しました」


「軽く言うな!!」


「航行、戦闘、遊覧──すべてお任せいただければ、安全な船旅をお約束します」


「うん。でもさ、お前……さっき墜落してたよな?」


「……データ検索中……該当の記録は存在しません」


「いやいや、俺の目の前で派手に落ちてきたんだけど。思いっきり火を吹きながら」


「おそらく、外的要因によるものです。つまり不可抗力。よって、当AIに過失はありません」


「なるほどね。で、記録もないと。つまり──」


「完璧です」


「……ポンコツだな、お前」


「AIにそのような感情的レッテルを貼るのは非論理的です。訂正を要求します、艦長」


「やだよ。絶対ポンコツじゃん」




「出発準備完了。目的地を指定してください」


突然、艦橋に表示される星図と機械音。


「目的地、ねぇ……」


俺は少しだけ考えて、それからニヤッと笑った。


「じゃあ、とりあえず──宇宙に上がってみるか?」


「目的地、スクラップ13大気圏外。了解しました」


船体が低く唸り、何かが動き出す音がした──と思った、次の瞬間。


「……エラー。

 機器損壊のため航行できません。

 修理プロトコルを実行してください」


「おい!! 結局動かねぇのかよ!!」


思わず叫ぶ俺に、AIがきれいな声で言い放った。


「航行システムの40%が破損しています。

 ただちに修復作業を開始してください、艦長」


「やっぱりポンコツじゃねーかお前!!!」


叫び声が艦橋にこだました。

けど……なぜか心は少しだけ、ワクワクしてた。



 宇宙なんて遠い夢だと思ってたけど──

 今はその入口に、俺は立っている。  


俺の物語は、ここから始まる。


「俺はずっと、ここから抜け出したかった」


「誰にも期待されなかった。だったら自分で、自分を拾い上げるしかない」


「ずっと我慢してた。夢なんて見ても意味ないって。でも──違ったんだ」


銀河のド底辺から──この船で、俺は宇宙を駆け上がってやる。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!


もし「続きが気になる」「ちょっと面白かったな」と思っていただけたら、

★評価・ブックマーク・感想など、どれかひとつでもいただけると励みになります!


あなたの応援が、物語をもっと広げてくれます!


次回もどうぞ、お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>『艦橋』と刻印されている。 文字が読めるのか。 それも『艦橋』なんて日常では出てこない字or綴りが・・・ >「目的地、スクラップ13大気圏外。了解しました」 現在の惑星名を認識してると
僕もポンコツaiを書いたことがあって、似たようなの探してたんですがキャラクターが面白いですね(僕と似てると言ったら失礼ですがw) 文章もとても読みやすいです。構成もワクワクする感じで、総合的によく出来…
2025/07/06 22:28 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ