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廃棄処分は生き延びたい

 ここはどこ?

 最後に見た光景とはかけ離れた目の前の状況に頭が混乱する。


――鉄と強化ガラスでできた無機質な部屋、告げられた廃棄処理宣言。投げ捨てられた先の『処分場』


 それがどうだろう。

 頬を預けている硬く冷たいが水分を含んでいることが分かる土、鬱蒼と生い茂る木々とその枝々から漏れ注ぐ日の光。

 俯せている身体を起こす。

 生身の左腕と、鈍く光る無機質な右腕が僅かな駆動音を発しながら上体を持ち上げ、両の脚で地面に立つ――それも木漏れ日に照らされて鈍く光っている。


 周囲を見る。どこを見ても相変わらず陰鬱とした工場は見えない。

 肺一杯に息を吸い込む。薬品の香りは無く、湿っぽい青臭さの残る空気が肺を満たした。


「どうしよ」


 降ってわいた自由に思わず独り言つ。

 いくら望んでいたとしても、流石に着の身着のままでポイ捨て同然に放り込まれるとは思いもしなかった。

 取り敢えず、


「……武装チェック」


 声帯認証で仕込まれた武器を取り出す。

 右腕前腕、掌側のウェポンラックが開いてレーザーハンドガンが姿を現した。

 滑るように手首に移動し、それを掴むと同化する様に姿を変えて起動状態に移行する。


「……痛みはない」


 無許可での武装使用によるペナルティがない。

 つまり、オンライン監視システムが機能していない……工場の支配から逃れている。


「近接武器使用」


 今度は手の甲側、前腕から高周波ブレードが姿を現す。


「起動」


 言葉に反応して小さく甲高い音を発する。

 落ちて来た葉っぱの移動先に刃を置くと粉々に砕け散った。振動が強すぎたか。


「うーん」


 一先ず武装をしまい込んでこれからの事を考える。どうしようか。

 人里……はあるんだろうか? そんなことしている間にもエネルギーが付きかねない。そもそも、こんな姿で現れて受け入れる人間がいるかなぁ?


 拠点……水辺を探さないとダメかも。後は都合の良い場所探し。


「うん、じゃあ」


 探索。かな。目標は川辺か、湖を見つけるまで。





「おっ」


 探していると、枝を折る音が聞こえる。それと獣臭い臭いも。

 木に登って音の方向を見る。


「なにあれ」


 熊…で良いのかな? それにしちゃデカいし、筋肉が凄い。

 これだけ音を立てても他の獣が寄ってこない辺りあれが頂点捕食者なのかな。

 もうちょっと離れた所から様子を見ようかな。


「あっ」


 枝から移った拍子に音立てちゃった。


――ヴルルルル…………


 ヤッバ、ばれちった。

 熊がこっちに向かってくる。慌てて今いる木から別の木へ飛び移った。

 さっきまでいた木に隈がぶつかった瞬間、音を立てながら木がへし折れる。

 うん、マトモに受ければ命はないな。


「起動」


 銃を構える。

 義手に接続した銃身がエネルギーをチャージして光を放つ。

 未だに此方に向かってくる熊の頭部に狙いを定めて――


「発射」


 一筋のレーザーが熊を貫き、その射線上にいた熊の四肢を残して蒸発した。

 力なく倒れる四肢と、焦げた臭いが残る。


「……残量は、あと5発分」


 生体電気で再充電は可能だけど、あまり多用は出来ないな。

 さっさと水辺を探さなきゃ。


「ん?」


 遠くで甲高い声、いやこれは…悲鳴かな?

 後は固いものがぶつかる音。

 この近辺に人が通る道があるんだ。


「ん――……」


 ちょっとだけ様子を見に行こうかな。

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