5-悠真視点・接続先の恐怖と深夜の来訪者
藤村悠真は、会社に泊まり込んで三日目だった。
サーバーに残された異常ログ。夜間にだけ発生する通信。
それらの意味を突き止めるため、ひとりで深夜にアクセス解析を試みていた。
深夜1時。
本来ならとっくに退勤している時間。
だが、今夜もまた、あのアドレスに繋がっていた。
[::beauties::in::反映領域::接続]
どこへ繋がっているのかもわからない。
ただ、そこに送信されているのは、“加工された顔データ”ではなく――『人の認識そのもの』ではないかという仮説に、悠真は背筋を凍らせていた。
「……人間の『理想像』を送って、その先で何が作られてる……?」
それは、もうアプリでも技術でもない『何か』だった。
そんなとき。
エントランスのオートロックが鳴った。
インターフォンに映ったのは、見知らぬ女性だった。
やや青白い顔、警戒と不安を貼りつけた瞳。
悠真は数秒ためらったが、応答ボタンを押した。
「はい」
「安堂真帆と申します。突然すみません。BEAUTIESについて、お話がしたくて来ました」
「……どうやって、ここを?」
「調べました。開発会社の住所、ネットに出てます。……開発に関わった方ですか?」
悠真は「はい」とも「いいえ」とも答えずに、答えを返した。
「BEAUTIESの件ですね。分かりました。今ドアを開けます」