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第9話 ベラトール

 決闘から数日間、晴れてDランクになったが、特にやることも無い日々が続いている。


 そもそもランクが上がったとはいえ、つい先日に冒険者登録をしたばかりの身だ。急に動きが変わることは無い。

 

 お試しでスライムの討伐依頼を受けてみたが、こいつが想像以上に厄介だった。

 半流動体のような肉体をしていて、真ん中にコアがある魔物だが、柔らかく表面が滑りやすいせいで斬りつけようとしても滑る。

 何とか動けないようにしてから刺し殺したが、とにかく面倒だった。

 

 あとから聞いた話だったが、どうやらスライムは初心者キラーと呼ばれるくらいに厄介な存在らしく、打撃も斬撃も通りにくい性質を持つ。

 物理的に倒すには刺突でコアを的確に撃ち抜くしか出来ない魔物だ。

 しかも倒せないことに焦っていると顔に飛びつかれるらしく、そのまま窒息死する初心者冒険者が多いのだとか。


 半分魔力でできていて、親和性が高いため魔法には弱いらしい。そしてジェル状の肉体がポーションの原料になるとか。

 回収したジェルは案外高値で買い取って貰えた。


 さて、今日も冒険者ギルドにやってきた訳だが、何をしよう。

 薬草採取は何回かやった。ホーンラビットやスライム討伐の依頼は経験しているし、他のことをしてみたい。

 

 面白そうなのでゴブリンの調査依頼がある。ホーンラビットにスライムと続いて王道な魔物だな。

 矮小な肉体だが力強く、結構素早い魔物らしい。スライム同様舐めてかかると死ぬタイプ。ただ単体性能は低く、しっかり防御して反撃をすれば問題ない。


 しかし今回の依頼は調査及び討伐であり、群れでいる可能性があるから何とかでCランクに位置している。

 私はDランク、つまり受注できない。

 勝手に行って勝手に調査することは出来るが、わざわざやる必要が無い。残念だが見送りだ。



「うーん……どうしようか」

「あの、ちょっといいですか?」

「うん?」



 どうしたものかとクエストボードとにらめっこを続けていると話しかけられる。

 パッと見二十歳にも満たない青年のようだが、邪魔だったか?

 後ろには仲間らしき人もいる。



「この前、闘技場で決闘をしたっていう人ですよね?」

「あー確かに私だが、何か?」

「良かった! 探してたんです! 突然なんですけど、パーティーに入ってくれませんか!?」



 何だ急に。

 探してた? パーティーに入れ?



「さっきゴブリンの調査依頼見てましたよね? 実は僕たち、それを受注しようと思ってたんです。でもいざ受けるぞっていう時にパーティーメンバーの一人が怪我しちゃって、人数不足で受けられなかったんです」

「そこで私が入ればいけると」

「はい! 理解が早くて助かります!」



 冒険者において、パーティーを組むことは日常的に行われることである。

 それはパーティーを組むことで、さまざまなメリットがあるからだ。


 ソロで動く時、依頼を受注する際に自分のランクが参照されるが、パーティーの場合ではパーティーのランクが見られる。

 つまり今の状況のように依頼のランクが自分個人のランクより高くて受けられない時、パーティーに入ることで受けれるようになる。


 そしてパーティーはそのパーティーのランクより一段階高い依頼も受けられる。まぁ滅多にされないらしいが。

 それに単独で動くより複数人の方が圧倒的に生存率が高まる。なにか特別な理由がない限り、パーティーを組むことが推奨される。


 勿論だが、パーティーにも制約が多々ある。

 例えばパーティーのランクをCにしたい場合は、半数以上がCランク以上の冒険者でなければならないとか、パーティーの最低人数は四人からだとか。

 今回は後者が満たせていないのだろう。

 しかし、怪しい匂いがぷんぷんする。



「パーティーか……探していたみたいだがなぜ私なのだ? そもそも、私のランクは知ってるのか?」

「はい、Dランクですよね? 結構冒険者内でも噂になってますよ! 登録した次の日にはもうDに上がったとかで!」



 そんな噂が。知らなかったぞ。

 いや、確かに決闘の次の日にギルドカードを変えたのは目立ちそうだ。

 ちなみにDランクのギルドカードは金板だ。

 ……そらバレる。



「探していたのは僕達駆け出しでして、同じ新人ならと!」

「ふーむ……まぁ行けるには行けると思うが、調査依頼はCだろう? Dランクの私が入るには少し力不足ではないか?」

「いえ、うちはみんなCですし、経験はあります。人数不足だけが問題なんです! 戦闘はさせません! いてくれるだけでいいので、ぜひ!」



 人数合わせの枠で参加か。荷物持ちくらいはするだろうが、戦闘は任せられると……ふむ。

 そうだな、一度くらいパーティーの経験をしておこう。どうしようもなくなったら見捨てる。



「……いいだろう。参加しよう」

「ホントですか!? ありがとうございます!」

 


 了承の返事をすると、ぱあっと明るい顔をして感謝される。

 そんなに喜ばれると少し思うところがあるな。



「急にメンバーが怪我しちゃったのでホントにどうしようかと悩んでたんです! では、受注してきますが、実際に行くのは後日にして、まずは自己紹介しましょうか! 僕はポース。Cランクパーティー『ベラトール』のリーダーです!」



 ポースは金髪で少しくせ毛な明るい青年だ。人当たりがよく好まれるタイプだろう。



「そしてこっちがオムニ、魔法と弓を使う遠距離アタッカーです!」

「よろしくね。魔法はちょっとだけよ」



 赤い髪をポニーテールにまとめた活発そうな女性だ。弓はただの木でできた物だ。異世界バージョンだから違う可能性もあるが。

 そして魔法が使えると。少しでいいからご教授願えないだろうか。



「こっちはミレス、両手剣で防御と攻撃を両立しているパーティーの頼りになる司令塔です!」

「よろしく」



 先程からよく目に入る大きな両手剣を持った男だ。表情や声色から知的で落ち着いた印象を感じる。

 司令塔ということはこの男を中心に戦っているのだろうか。それとも作戦をたてる役割か?



「あとヴェンっていうシーフのメンバーがいるんですけど、怪我で今は療養中です」

「大きい怪我なのか?」

「いえ、捻挫程度なんですけど、よく動く役職なので」

 


 まぁ無理にやる必要はないだろうし妥当か。

 これでパーティーメンバーは全てだが、見事に物理職しか居ないな。

 オムニが魔法を使えるらしいが、火魔法が少ししか扱えないらしい。あんまり期待できないだろう。



「簡単には知っていそうだが、改めて私も自己紹介を。私はカンナ、ついこの間Dランクに上がったばかりの新人だ。見ての通り剣を中心に戦うが、あまり期待しないで欲しい。よろしく頼む」



 私は主に直剣を使って戦い、牽制やサブウェポンとして短剣を用いる切り替え式の物理職だが、今回は荷物持ちになるだろう。

 特に出しゃばるつもりはないから大人しく見ていることになる。



「では依頼を受注してまいります! 調査依頼は早めに行った方がいいって言われてるので明日には出発したいのですが、大丈夫ですか?」

「大丈夫だ。問題ない」



 依頼を受注する前にパーティー登録をするらしい。登録と言ってもギルドカードを重ね合わせるだけらしいが。

 互いのギルドカードを重ねる。Cランクのギルドカードはどうやらプラチナらしい。白金色の板が出てきた。


 登録を済ませるとギルドカードにパーティー情報が書かれている。これも魔法の一部だろうか、電子機器みたいだ。

 これでパーティー『ベラトール』に加入したことになったはずだ。

 依頼を受注して解散となる。


 今日はレナトスが定休日でこれ以降特に予定は無い。変に動いて明日本領発揮出来ないのも困るから、大人しく帰って休もう。

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