表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/51

蛇ノ目剣は裏で暗躍する③

 公花もこのパターンにはすっかり慣れていて、「行ってらっしゃ~い」などと言いながら小さく手を振っている。


 面倒だ。溜め息を隠し、席を立った。


       *


「ごめんね。今しかできないことに、集中したいから――」

 案の定、声をかけてきた女生徒から「好きです、付き合ってください」と告白されるも、シンプル丁寧にお断りして。


 図書室に戻り、引き続き公花の勉強を見てやって――司書から下校を促される頃には、窓から差し込む日差しはオレンジ色になっていた。


 公花と一緒に昇降口の手前の廊下まで来たところで、指を滑らせた振りをして、鞄をわざと取り落とした。


 蓋のロックを外しておいて、中身までぶちまけている自分は非常に滑稽(こっけい)だが、これも必要なことなのだ。


「あっ、鞄を落とした。拾うのを手伝ってくれ」

「はぁ~? また?」


 数日前にも同じことをしたので、呆れた顔をする公花だったが、「指の力なさすぎじゃない?」とぶつぶつ言いながらも、身を屈めて拾いにかかる。素直なやつだ。


 その隙に、公花のロッカーを開けた。

 予想したとおり、靴がぐっしょりと濡れて、汚れている。彼女を妬む輩が、泥まみれにしたのだろう。


(まったく手間のかかる)

 視線に力を込め、神通力で水分を蒸発させ、泥も消し飛ばす。


「剣くん、拾ったよ~。あのさ、剣くんの鞄、蓋の金具が甘くなってるんじゃない?」


 こちらのお膳立ても知らず、のんきに追いついてきた彼女から、差し出された鞄を受け取った。


「そうか。まだ新しいんだけど、不良品だったかもな」


「もう今さら交換は無理かもねぇ……。あれ? 私の靴、こんなにきれいだったっけ?」


「おい、公花。さっさとしろ。行くぞ」


「? う、うん」


 首を傾げながらも、靴を履き、テテッと後ろをついてくる公花。

 校門を出る頃には、少しの違和感など消え去って、彼女の顔にはのほほんとした笑顔が戻っている。まったく幸せなやつだ。そこがまぁ……微笑ましいと言えば、微笑ましい。


       *


 学園を遠くに見渡せる土手まで一緒に歩いて、住宅路に入るところで別れることにする。


「剣くん、ばいばーい。また明日ね」

「ああ、気をつけて帰れよ」


 彼女の姿が消えると、一台の黒塗りの車が、脇にすっと現れた。


 停車した車から、黒ずくめの服を着た運転手が降りてきて、頭を下げる。


「ご学業、お疲れ様です、剣様」

「いいから、彼女の跡をつけろ」


 運転手が開けたドアから、後部座席に乗り込む。

 ほどなく車が走り出した。


 時間に余裕があるときは、彼女が家の敷居をくぐるまで、こっそりと見送ることにしている。白蛇は元来、慎重な性質なのだ。


 音もなく車が追いついていくと――。

 気にかかっていたとおり、ひとりきりになった公花を尾行している者たちがいた。


お読みくださり大変ありがとうございました!

もし気に入って下さったら、

下の☆☆☆☆☆からの評価や、ブックマークをしてくださると、励みになります。


続きのほうも何卒よろしくお願いいたします(*ᴗˬᴗ))ペコリ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ