前世の天敵から逃れられません②
「日暮、おまえ、どうやって入試受かったんだ……?」
「マークシートだったんですよ。てへ」
そう、公花はマークシート試験にはめっぽう強い。勘がよい、というか「強運」の持ち主なのである。
「いや、だって……うちは狭き門の難関のはずだぞ?」
「受験の日、めちゃくちゃ冴えてたんですよ~。それに、うちの父は冒険家なんですが、よく効くお守りを手に入れたとかで、おまえは運だけはいいから、オプションで運気のブーストしとけって外国から送ってくれた物もありまして……。あれが効いたのかな? 今もどこほっつき歩いてるのかわからない父なんですけどね~!」
と説明しながら、あははと笑う公花。田中は絶句している。
そのお守り袋のおかげかどうかは定かではないが、まぁ父からせっかくもらったものなので、今も首から下げ、制服の中に入れて携帯している。
「はぁ……おまえの強運スキルとやらがうらやましいよ、俺の評価も上げてくれ……」
「先生も評価とかあるんですか、大変ですね」
田中はキッと公花を睨んで言った。
「おまえが言うな! 生徒の成績イコール俺の評価になるんだからなっ」
癇癪を起こして怒鳴っていても、田中の言葉に嫌味はない。
公花が「あぁこの先生、いい人だな~」などと思いながら、にこにこ笑って聞いていると、田中はひとつ大きなため息をつき、真剣な面持ちで説教を続けた。
「いいか、うちの学園はそこまで甘くない。おまえは断トツで学年最下位だ。このまま大惨事が続いたら、退学を迫られるかもしれんぞ。学園全体のレベルが下がるからな。せめて平均点をたったひとりで下げまくっている状況を改善しないと……」
「ヒッ! 退学って、そ、そんな……。冗談ですよね?」
「いやマジだ。大マジだ」
「あのぅ、今後の試験をマークシートか、すべて選択式にしていただくなんてことは……」
「ダメにきまっとろーが!」
田中が飛ばした唾を顔に受けながら、公花は「困った……」と彼女なりに悩み、考え込んだ。
別に自分は、勉強しないわけではないのだ。だが勉強しても頭に入らない者と、きれいに引き出しに収まる者がいる。自分は前者である。
田中のためにもいい点数を取れるようになりたいが、そうなれるという自信はない。
一方、「いい人」である田中も、ぶつぶつと呟きながら、この問題児をどうすべきか悩み、頭を抱えていた。
「俺が勉強を教えてやりたいが、部活があるしなぁ……」
彼は、サッカー部の顧問を担っているのだ。熱血派なので、活動日も多い。
「先生、無理はしないでください」
「だから、おまえが言うなぁっ!」
――と、そんな哀れな男の後ろに立つ人影が。
「先生、落ち着いてください。血圧が上がりますよ」
(ヒェッ!)
現れた人物を見て、公花はピキーンと固まった。
細身だが軟弱ではない王子様スタイル。硬派な黒髪に、切れ長の目。
天敵の「蛇」がそこに立っていたのだ。
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