表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/51

日暮家と蛇ノ目家④

 彼女もまた、長い時を生きてきた、蛙を祖とする妖である。

 年齢は二百余年。

 御使いを補佐する「側仕え」として長寿を許されているものの、主との霊格の違いは明確にある。


 蛇のように再生することはできず、時の流れの先に終わりは待っている。

 だが、彼女には刻んだ皺とともに培った知恵があった。


(剣様の記憶が、戻りかけている……)


 神通力を使う御使いが、前世の記憶を取り戻すなど。

 これは、長らく仕えてきた自分が見る限り、初めてのことだった。


 剣に運命づけられた「輪廻の呪い」が不安定になったことは、薄々感じていた。

 神通力の減少自体は、今に始まったことではなく、数十年おきに訪れるサイクルだ。

 そのたびに御使いは脱皮を繰り返し、また新たな肉体となり、充足した霊力を取り戻す。


 神域に達した妖、御使い――摂理によって選ばれ、輪廻の枠を外された、神が定めし存在。

 彼女は生業であるサポート役をこなしながら、その大いなる力を利用するようになっていた。


(再生した当初、御使いは幼い子どもの姿になり、余分な記憶は消去される。それゆえ扱いに困ることはなかったのだが……)


 不必要な遠い昔の記憶がよみがえるなど――なにかの綻びとしか思えない。

 物事には終わりがある。

 おそらく、もう剣の体も魂も、限界を迎えようとしているのではないか。


(もし、そうだとすれば──)


 当主の力を裏の世界で活用することで、蛇ノ目家と宗教団体「騰蛇(とうだ)」は繁栄してきた。


 舞い込む祈祷や呪詛の依頼。それは表社会だけの繋がりにとどまらず、裏の政財界、警察権力に至るまで、根深く関係を築いている。

 当主の力がなくなれば、困ることは明白だが――。


「だが、これはチャンスだ」


 側仕えで終わるつもりはない。

 自分とて、数百年生きてきた妖なのだから。


 こんなこともあろうかと、準備は進めてある。御使いの能力を引き継いで、己が一族のトップに立つ――。


 老婆は耳まで裂けるほどに口角を上げ、クツクツと笑った。

お読みくださり大変ありがとうございました!

もし気に入って下さったら、

下の☆☆☆☆☆からの評価や、ブックマークをしてくださると、励みになります。


続きのほうも何卒よろしくお願いいたします(*ᴗˬᴗ))ペコリ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ