15話――Search and strike and destroy⑤
夜、パーティー会場。
私はバッチリ着飾って、笑顔を振りまいていた。
「まぁ、アザレア子爵の娘さんがこんなに大きくなって!」
私の方に歩いてくるのは品の良いおばさん。体重が私の三倍くらいありそうで、私の五倍くらい厚塗りのメイクだけれど、背筋は伸びているし付けている宝飾品は可愛い。
大きな宝石のついた髪飾り、シンプルなデザインの指輪が七つくらい。金色のネックレスには、大きなバラがついている。
一見成金みたいな格好の、このおばさんは……。
「ありがとうございます、ダーラ様」
(えーっと、この人はダーラ・パールバーレー。マングーに拠点があるパールバーレー男爵の第一夫人で孫が宝石の商会やってる人!)
脳内に駆け巡る、ここ最近の一夜漬けの成果。私は笑顔のまま、ほとんど反射的に口を動かす。
「そういえば、わたくし自身は持っていませんが、この前出入りの商人がバーレー商会の首飾りを自慢してきまして。とても素晴らしい作品でした」
「まぁ! それは孫の作品なのよ。良かったわ、素晴らしいとおっしゃってくれる方がいて」
上機嫌で孫自慢に移行するダーラ夫人。私は心のなかでホッと息を吐きながら、彼女の話に相槌を打つ。
「特にダーラ様の付けてらっしゃるアクセサリーも素敵ですわ」
「分かるの!? そうなの、これらも全部孫の作品でね!」
そう言って一つひとつ解説してくれるダーラ夫人。私はニコニコ笑顔で話を聞きつつ、そのお孫さんへ会う道筋を整えていく。
「それでね、この子ったら最近は……」
「それは大変でしたね。でしたら今度、わたくしに会わせていただけたら、ダーラ様についてどう思ってらっしゃるかお聞きいたしますわ」
「まぁ、良いの?」
「ええ」
ユウちゃんみたいなイケメンなら、この手のおばさんを懐柔するのも楽なんでしょうけど。
でもこれで、お茶会のお誘いをゲットよ。
「あら、友人が呼んでいるわ」
「まぁ、お時間を取らせてしまって申し訳ありません。とても有意義なお時間でしたわ」
「そう言っていただけると嬉しいわ。では、次はお茶会でね」
「はい、ダーラ様」
私は優雅にお辞儀して、ダーラ夫人を見送る。相手に気づかれないよう小さく息を吐くと、一歩後ろに立っていたカーリーが冷ややかな笑みを向けていた。
「よくまぁ、あんなに思っても無いことが出てきますね」
「あら、完璧な令嬢にふさわしい言動だったでしょ? それに、アクセサリー自体のセンスは良いと思うもの」
組み合わせが踊るヘンテコリンなだけでね。
とはいえ、宝石の商会を経営するお孫さんとコンタクトが取れそうなのは嬉しい。面倒な話を聞いた甲斐があったわ。
事業のことについて脳内で皮算用していると……マリンが近づいてきてそっと耳打ちしてくる。
「(三時の方向に、レギオンホース家じゃ無い女癖の悪い輩が)」
彼に言われた方向を見てみると――そこでは、上品な見た目の男性が品なくメイドに声をかけているところだった。
「なるほど、貴方はモニローリ家のお抱えと。素晴らしい目利きですな、貴方のような美しい女性を召し抱えるとは――」
「ごきげんよう、マーク様」
「――これはこれは、イザベル殿」
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