14話――王都よりも遠い場所④
「まぁ分かりましたけれど……それにしてもイザベル様。今夜もまた野宿ですか?」
「別にいいじゃない。シャワーは浴びれるし、レイラちゃんのおかげで寝床もふかふかよ?」
「でも野盗とか……」
「野盗や魔物の何が怖いのよ」
アクアたちがいるから衛生面は問題ないし、レイラちゃんの作ってくれたこのキャンピング馬車のおかげで寝床も確保できている。
普通の貴族は行く先々の懇意にしている貴族の家に泊まるのが常道だけど、この程度で借りを作るのも面倒だ。
「でもレイラの姉御、こんな凄い馬車作れるなんてヤバいッスね」
「だって長時間座りっぱなしとか、お尻痛くなるじゃないですか。馬車とかサスペンションもゴミですし」
そんな彼女は旅立ちしてからずっと寝床スペースでゴロゴロしていたわけだけど、自分が楽するためには苦労を惜しまないタイプね。
この子、道中で魔物に絡まれた時も寝床から出てこなかったからね……。
「今日はマングーに入って、一泊してから……明日、レギオンホース家のあるシェマバ入りしますね」
地図を見ながら言うカーリー。ちなみに馬車は私の使い魔で運転しているので、殆ど自動運転。ホンダより先に自動運転を完全実用化よ。
「シェマバって何が名産だっけ。せっかくだしお土産を買って帰りましょうよ」
私がるんるん気分でそう言うと、カーリーは地図を閉じてからジト目を私に向けてきた。
「……イザベル様、ボクらが何をしに行くか忘れてるんじゃないでしょうね。貴族同士の夜会に出るんですよ? 夜会は顔つなぎをする場ではありますが、基本はビジネスの話をするわけじゃないんですからね? ――他の貴族とお会いする時まで予習復習は続きますよ。まだ参加する貴族の名前覚えてないでしょう!」
「うぐぅ……貴族、面倒ね……」
カーリーが取り出したのは、今夜の夜会に参加する貴族リスト。
しかも中にはイザベルと面識のある貴族もいるものだから、話題を合わせるためにも暗記事項が馬鹿みたいに多いのだ。
この手の悪役令嬢には珍しく(?)、本性を出す前は社交性も抜群だからクールに振る舞って喋らないというのもご法度。
あくまでイザベルとして、社交界でも完璧な令嬢でいなくちゃならない。
「まぁまぁ、女神。たしかに名前を覚えるのは面倒だろうけれど、同年代の可愛い子もいるだろう?」
「ユウさん、イザベル様は可愛い子たちは五秒で覚えてます。性癖には忠実なんですこの人」
人を女好きみたいに言わないでほしい。
「違うんスか?」
「違うわよ。……あ、なんか見えて来たわよ。村かしら?」
「話をそらさないでください、イザベル様」
「だから違うって。ほら」
私の指さした先には、いくつかの家と集落。
あまりにも静かで、人の気配が希薄な――村だった。
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