12話――レージョーズ・エンジェル⑦
ジルゴは砕けた椅子の破片を掴み、力任せにぶん投げてきた。なかなかのスピードねーー私は立った状態から、上体を寝かせながら女の子座りになってそれを回避。
今度は踏みつけてこようとするので転がって避け、体重が乗った軸足を払う。
大きな音をたてて転ぶジルゴ。なかなか愉快で無様で、思わず笑ってしまう。
「ちょこまかと……!」
歯ぎしりしながら睨みつけてくる。かなりな勢いで倒れたのに、見た目通りタフね。
「柔よく剛を制すって言うでしょ?」
「知るか!」
ウインクした私に向けて、今度はショルダーダックルをぶちかましてくる。
空気を撓ませ、弾丸のような速度で飛んでくるジルゴ。私は震脚で床をぶち抜き、足を固定してからーー前蹴りでタックルを弾き飛ばした。
「げぶっ!」
「まぁ私、柔なんて使えないけど。剛で十分だし」
ジルゴはビリヤードの球のように突き出され、壁にめり込む。しかしすぐに瓦礫を振り払うと、歯をむき出しにしてこちらを睨んできた。
「腐れアマがぁ……! 殺す、殺す殺す殺してやる!!」
気が狂れたように顔を真赤にするジルゴは、さらに心臓の音を高めていく。
ただタフってだけじゃあ……なさそうね。
「余裕が無い雑魚ほど醜いものは無いわね」
そう言いつつ、ジルゴのダメージを観察する。急所を狙わなかったとはいえ、カウンターで私の蹴りが炸裂したのにすぐ立つってことは……。
「痛みを感じてないのね、さっきの薬かしら」
「殺す!」
痛みを感じないなら、気絶させるか殺すか。
組み付こうと腕を広げてゆっくり近づいてくるジルゴ。私はその足元に飛び込み、倒立と同時に腰を捻りながら足でジルゴの首に組み付いた。
「っ!?」
驚いて私の足を外そうとするジルゴだが、それよりも早く腕を支点にして足で首投げをかける。プロレス技で言うところの、ヘッドシザーズホイップだ。
「それ!」
勢いよく頭から床に突き刺さるジルゴ。さっき組織とか言ってたから、殺しはしない。
「殺さないけど、後遺症には苦しんでもらおうかしらね。えい」
床に突き刺さっているジルゴの頚椎をつま先で蹴飛ばす。人体から鳴っちゃいけない音がして、彼は身動きをとらなくなった。
「死んでは……いない? うん、まぁたぶん死んでない」
ジルゴはゆっくり倒れ、先にのしておいた連中の上に積み重なる。
私はその上に腰掛け、足を組んでからジーミーに笑いかけた。
「まだ無駄な抵抗、してみる?」
「ひ、ひ、ひ……」
私があまりにも美しいからか、微笑みかけられたジーミーは白目をむいて泡を吹きながら後ろに倒れるのだった。
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