12話――レージョーズ・エンジェル⑥
肩に置かれた腕を掴み、足を振り上げて真後ろのジルゴの顔面につま先を叩き込んだ。今日はスリットの深いドレスを履いてきて良かった、戦いやすいわ。
入口の扉に叩きつけられるジルゴ。私はその勢いを利用して立ち上がり、椅子を滑らせて後ろの男の一人にぶつけた。
「ひいっ!」
椅子が砕ける音に驚き叫び声をあげるジーミー。無視して顔をあげると、椅子をぶつけられていない方の男が、ナイフを取り出した。
「こ、このクソアマ! 殺してやる!」
横から突進してくるナイフマン。私は突き出された腕を左足で蹴り、手首をへし折ってナイフを取り落とさせる。
「いぎゃいああああ!!」
痛みにのたうち回る男の喉に、後ろ廻し飛び蹴り(ローリングソバット)を叩き込んだ。
勢いよく吹っ飛び、ジーミーの前のローテーブルに落下する。
「ひぃぃびいいいい!!」
震えながら叫ぶジーミー。逃げ場なんて無いのに、壁に背をつけて首を振っている。
「ち、ちくしょう! 動くんじゃねぇ!」
その叫び声に振り向くと、椅子をぶつけられた男が指をピストルのように構えていた。
「戦争ごっこなら他所でやって」
身を低くして迫ると、男の指先に魔力が集まった。
「あら」
「死ね!」
圧縮された魔力が、弾丸として男の指先から発射される。こんなゴロつきが、魔法を使えるなんてーー私は驚きながら、魔力弾を叩き落とす。
「なっ!?」
「威力がしょぼすぎ」
私が膝を腹にぶち込むと、悶絶して地面に崩れ落ちる。そして下がった胸を踏み台にして男を駆け上がり、その顎をつま先で蹴り飛ばす。
壁にぶつかって跳ね返ったその男を、テキトーに蹴とばしたらさっき倒したナイフマンの上に転がった。
「ひぃぃぃぃぃぃぃ!!」
泣きながら、椅子から転げ落ちて頭をかばうジーミー。私は彼に近づこうとしたところで、ジルゴが背後から声をかけてきた。
「まだ……終わってねえ……!」
「じ、ジルゴさん!」
顔を綻ばせ、希望に満ちた笑みを浮かべるジーミー。私は振り返ると、そこではジルゴが身を低くして全身の筋肉に力を込めていた。
「ふーっっ、ふーっ!」
荒い息、どこからともなく聞こえてくる太鼓の音。彼の筋肉が真っ赤に染まり、体躯が一回り大きくなった。ゴブリンキングよりも一回り小さいくらいかしらね。
彼の変身が終わると、声を振り絞ってジーミーが応援しだす。
「い、いけー! ジルゴさん!」
「ふーっ! ふーっ! オレは……『組織』の薬を飲んだ……! 心臓が強化され、身体能力が劇的に上がる薬を!」
なるほど、太鼓の音は心臓の音だったのね。私は彼に向き直ると、ちょいちょいと手招きをした。
「来なさい」
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