12話――レージョーズ・エンジェル⑤
「おい、ジーミー。随分、時間かかってんじゃねえか。女一人追い返すのに、どんだけ時間かかってんだ?」
「ひっ、あっ、ジルゴさん!」
ジルゴと呼ばれた男は、この中のリーダー格なのだろう。禿げあがった頭と丸太のように太い腕。身長も二メートル近いわね。
後ろの二人も、ジルゴに比べれば小柄だけど……比べる対象が悪いわね。十二分、脳まで筋肉ですって見た目をしている。
「なんだぁ? しかもしょんべんくせーガキじゃねえか! こんなんが新しいカムカム商会の頭か? それとも……ああ、愛人にでも来させてんのか」
嘲笑しながら、私の顔を覗き込むジルゴ。この距離で私の顔を見て誰か分からないって、どんだけ無知なのよ。
……と、思ったけど私も高校の時の生徒会長知らなかったしね。こんなもんかしら。
「じ、ジルゴさん。お、女一人とは言いますが……その……」
「ああ!? テメェ、口答えすんのか!? シューシンさんに逆らう気か!? ああ!?」
「ひっ」
シューシン、というのが向こうの頭か。後でマリンくんちゃんに調べさせないとね。
私がその様子を傍観していると、ジーミーはぶつぶつ言いながら……何やら決意したような目になる。
「そうだ……ど、どうせ……どうせ、殺される……どっちみち、殺される……なら、それなら……」
ジーミーは顔を上げ、ジルゴを見る。決意した目……ではなく、縋るような目で。
「ジルゴさん、こいつ……金持ってます。わ、わたしは……何も見てません」
「おー?」
厭らしい笑みを浮かべるジルゴは、私の肩に手を置いた。
「おいジーミー、一部屋貸せよ。……おいねぇちゃん、ちっと顔かせや。なに、テメェのパパより気持ちいいことしてやるからよ。ガハハハッ!」
楽しそうな笑い声。それにつられて、後ろの男二人も品の無い笑い声を発する。私は肩に置かれた手にそっと触れると、懐から――とあるお菓子を取り出した。
「……なんだ、これ」
ジルゴは自分の手に置かれた小さいお菓子……タブレットのような物を見て、困惑した表情を浮かべる。
優しい私は、精一杯の笑顔で説明してあげた。
「これはミスンティって言ってね。清涼感のあるハーブで作られたお菓子なの。あんたにオススメよ?」
「あ? 何言って――」
「――わかんない? 口が臭いって言ってんのよ、脳まで筋肉で言葉が理解できないのかしら」
吐き捨てるように言うと、一瞬で顔を真っ赤にするジルゴ。
「こ、このクソアマァ!!! ぶっ殺す!!」
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