12話――レージョーズ・エンジェル④
「や、雇われてなど……! その、た、確かに懇意にさせていただいている方はいます。しかし、しかしですね!」
「そいつの判断が、親会社の社長である――っと、その概念は無いわね。んー、まぁ商会の長である私の判断よりも上であると言いたいのよね」
だから私の提案を断っている、と。
であるならば、私からの答えは一つだ。
「呑まないなら、首にするだけよ。アンタが誰と関わっていようか、一切考慮に値しないわ」
「……で、ですから。その、合理的に――そう、合理的に考えてですね。今までの体勢をすぐに変えたら従業員にも混乱が……」
「だから段階的にって言ってるでしょ? それに私は、辞めたい人を引き留めてまで働かせようとは思っていないわ」
この世界に雇用契約書なんて存在していない。それもどうかと思うけれど、労働者の権利なんて前世ほど保障されていないのが実情だ。
よって彼をこの場でクビにすることは何ら問題無いし、心情的にも別会社の人間の息がかかった奴なんて雇いたくない。
「で? 他にケツ持ちがいて、そいつの意向で変えられません――以外の理由があるの?」
私の追及に、グッと言葉を詰まらせるジーミー。大きくため息をついて、足を組んだ。
「ここで食い下がらなければ、今はバレなかったのにね。それじゃあ、三日以内に荷物を纏めて出て行って頂戴」
「ま、待ってください! わ、わたしには妻も子どももいるんです!」
「なら別の店舗でボーイとして雇ってあげるわ。バイト待遇だけど、どうせ人手は足らないし。今まで通りの贅沢は出来ないかもしれないけれど、暮らしていくなら十分な給金を出すわ」
「そ、そんな!?」
同情を引こうとしても、あまり意味は無い。どうせここで見逃した所で、マリンくんちゃん達に調べさせて――クロだったら、問答無用で首だからね。
言葉に窮し、俯くジーミー。私は背もたれに体重をかけ、足を組み替える。
そうして、一分ほど経った所だろうか。彼はぶつぶつとうつむいたまま何かを呟き始める。
「イヤだ……か、金が……金を……う、うう、し、死にたくない……」
「……聞こえないわよ、なんて言ってるの?」
「嫌だ……うう、うう……金が、金が……やっと、もう少しなんだ……もう少しなのに、う、うう……」
「――時間切れね。また三日後、新しい店長を連れてくるわ」
私が立ち上がろうと足を降ろしたところで――背後のドアが開いた。中から屈強な男が三人ほど、中に入ってくる。
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