2話――会議はお茶と踊る-①
「もぐもぐ……むしゃむしゃ……」
「はぐ、もぐ」
というわけで朝ご飯。ちょっとしたテーブルで二人、向かい合いながら食事をする。壁際には棚やロッカーがあったりなど休憩所のような雰囲気で……豪華なシャンデリアの下で食べないといけないかと思っていたから、少しホッとする。
カーリーは小さいお口で一生懸命ベーコンエッグを食べている姿が、とても可愛らしい。
「すいません、休憩所でご飯にしちゃって。イザベル様が毎度食べられてたところは広すぎる上に運ぶのが大変で……」
「別にいいわよ。それよりもカーリー、あんた料理上手ね」
「ありがとうございます。前の世界では四歳から母親とその愛人のためにご飯を作らされてたんで慣れてるんですよ」
さらっと闇を告白するカーリー。朝から胃もたれする話はやめて欲しい。
出される料理はベーコンエッグとスープという素朴な物だったが……素材も料理人の腕も良いのだろう、かなり美味しい。
特にこのベーコンエッグは貴族の家で出るとは思えないほど庶民的でとても美味だ。
「……」
何故か目の前で自分の分のベーコンエッグを食べもせず、楽しそうに目を細めて笑っているカーリー。
私はパンを飲み込んで、彼女に尋ねる。
「なんでそんなに嬉しそうなの?」
「食事の時に同じテーブルに座らせていただける上に、罵倒もされないなんて前世、今世含めて初めてですから」
だから朝から胃もたれするような闇を暴露するのはやめて!?
女の子の泣き顔や困り顔が好きな私も、流石にそれを飲み下せるほど大人じゃない。私はゆっくり立ち上がり、カーリーを抱きしめた。
「え、今ボク何かしました!? な、投げられるんですか!?」
……ちょっと厳しく接しすぎたかしら。
私はため息をついて、彼女の頭を少し激しめに撫でる。
「ちょっ、くすぐったいですよイザベル様ぁ」
甘えた声。そうね、なんのかんの言っても彼女は年下なんだから、もう少し優しくしてあげても――
「あ、でも食事中に勝手に立つのはマナー違反ですよ? これからは社交界に出ることもあるかもしれないので、ちゃんとテーブルマナーは学んでいきましょうね!」
――前言撤回。この子は私をこの意味不明な状況にぶち込んだ元凶だったわ。何が悲しくてテーブルマナーなんて学ばねばならないのよ。
私はカーリーのほっぺたをつまみ、上下左右に引っ張る。
「いひゃいいひゃいいひゃいいひゃい!」
「あんたが私を巻き込まなきゃ、悠々自適に一人暮らししてたのよ! ったくもう」
カーリーの頬から手を離し、食事に戻る。
それにしても、まさかコックまでクビにしてるとは思いもよらなかった。
……いや、イザベルは主人公が出てくるまでは人格者として有名だったはず。なのに何故、コックをクビにしたりしているのだろうか。
頬をさすっているカーリーの方を向き、尋ねる。
「ねぇ、前のコックは何かヘマでもしたの?」
「いえ、ご自身で辞めたいと仰られて、以降後任を雇ってない感じです。メイドさんも殆どいないので、ボクがイザベル様の分だけ作ればよかったですから」
なるほど、そういう理屈か。
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