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10話――ゴブリンマーダー⑤

「っと、逃げるのね」


 ゴブリンキングはよろめきながら立ち上がると、私たちに背を向ける。すかさず蹴り飛ばすと――地面にへたり込んだまま、懇願するように両手を組んでこちらに頭を下げた。

 その姿は、国教の祈りのポーズとよく似ている。


「……なんの真似?」


 両腕を蹴り飛ばす。消し飛んだそれを見て、ゴブリンキングは怯えたように首を振った。両足を揃えて座り、両手をついて頭を地面にこすりつける。


「ゴブガッ、ゴブガッ!」


 泣きながら、懇願するようなゴブリンキング――私はその首根っこを掴んで、地面に叩きつけた。


「命乞いなんてどこで覚えたのかしら。……なんて、聞くまでも無いわね。あんた、同じポーズをしてた女の子に対して……一度でも手心を加えたこと、あった?」


 優しく、優しく問いかける。ゴブリンキングは言葉を全部理解出来ているわけじゃないのだろう。媚びるような目でへらへらと笑う。

 私が笑みを浮かべて手を離してあげると、嬉しそうにゴブリンキングは笑った。その顔を見て、私は下あごを蹴りで消し飛ばした。


「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」


 叫ぶことも出来ず、地面を転がるゴブリンキング。私はサッカーボールのように蹴り上げ、壁に叩きつけた。


「さっきも言ったわよね。死にたければ、謝るんじゃなくて外に出るの。自分の足で! 死にに行くために! 外へ! ほら、どうするの!?」


「ガァアアアァアァアァ……!」


 嗚咽のように声を絞り出すゴブリンキング。するとその下半身が、音を立てて徐々に徐々に小さく圧し潰されて行く。


「うーん、やっぱり人体と違って綺麗にダイヤモンドになりませんねー。しかも硬い……よくあんなバターみたいにすぱすぱいけますね、イザベルさん。うーん……えいっ!」


 いっそう気合いを籠めたレイラちゃんの声の後、ゴブリンキングの下半身が消えた。そして地面に落ちた小石を拾ったレイラちゃんは、残念そうに眉に皺を寄せる。


「ダイアモンド……あんた、そうやって作るんだ……」


「そりゃ。わたしの魔法、圧力をかける魔法ですから。料理の時とか便利ですよ?」


 ゴブリンキングをあっさりと握りつぶしておきながら、笑顔で料理の話をするレイラちゃん。彼女が呑気で、ちょっと毒気を抜かれちゃった。

 ゴブリンキングをその辺に放ると、ゴブリンキングは立ち上がって――よろめきながら、外へ向かって歩き出した。

 やっと死ぬ気になったらしい。


「カーリー、そろそろ終わりそう?」


「魔力反応は大分小さくなってきました。三分もあれば」


「はいはーい。レイラちゃんもゴブリンの相手、お願い」


「了解ですー」


 逃げ出そうとするゴブリンキングに、蹴りを入れる。フレアを呼び出し、手足の端から炙っていく。


「ゴブガアアアア!」


 悲鳴をあげ、先ほどまでのどこか人間らしい仕草でなく、ただただ恐怖と痛みに悶えるゴブリンキング。その様子はまさに畜生と言った風情で。


「ほら!」


 蹴り飛ばして壁に突き刺す。ゴブリンキングは苦しみ、悶えながらも出口に向かって走り出した。

 だから私はゴブリンキングの前に回り込み、天井に向かって蹴り上げる。今度は頭が潰れないように加減しながら。


「……そろそろ、ゴブリンの残党も終わりそうね」


 私はそう呟いて、笑顔を作った。


「じゃあそろそろ、逃げて良いわよ」


 ゴブリンキングは私の言葉を聞くと、嬉しそうな表情で頷いた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 怖い、恐い。

 あのメス、恐い。


「ゴブガ……ゴブ……」


 ゴブリンキングは、生まれて初めて味わう『恐怖』に身を竦ませながら……自らの巣穴の外へ向かって走っていた。

 産まれ落ち、あの剣を握ってからというもの、敵なんていなかった。メスを犯すのは楽しかった。

 目の前に来ると、何故かメスは両手を組んでぶつぶつと呟いた。そして次に涙を流し、そして最後は地面に手を着いて頭を下げる。

 その様子がたまらなく愉快で、たまらなく気持ちよかった。わざわざその姿を見てから、犯したことも何度もある。

 なのに、今日のメスは違った。どれだけ攻撃しても当たらないのに、何度も殺された。

 痛かった、恐かった。

 メスたちと同じことをしたら許されるのだと思ったのに、それすら無意味だった。それどころか、もっと攻撃が苛烈になった。

 だからもう、逃げたかった。


「ゴブッ!」


 外が見えた。あそこに行けば楽になれる。

 ゴブリンキングは歓喜に打ち震えながら、外へ走り出し――そして、出口を目前にして巣穴の中に引き戻された。


「ッ!」


 叫ぶ間も無かった。救いの道ではなく、恐怖の巣穴が眼前に広がる。

 そして目の前にいるのは、さっき殺せなかったメスが二匹。


「わかったわかった、分かったから。気の済むまで実験していいから」


「やったぁ! じゃあまずこの薬品!」


「間髪入れずにやるわねあんた!?」


 肉体が、溶ける。

 痛みが無い、でも溶ける。

 恐い!!


「次はこの切片を作って……それでこれを……」


「ねぇそれ、どれくらいかかるの?」


「最短で一週間くらいですかね?」


「長いわよ! せめてあと一時間だけ!」


「えー……」


「えーじゃない。分かった?」


「はーい」


 肉体が奪われる。どんどん削られる。

 痛い、恐い、辛い、痛い、痛い、痛い、イタイイタイ、イタイイタイイタイ、イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ。


「……………………!!!!」


 声も、出ない。

 いや、だ。

 だめ、だ。

 はやく、ころして。

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