9話――ワタシたち花のメガミ組④
ゴブリンメイジが倒された直後、苗床の中。
まだ比較的凌辱された形跡の薄い女性が――ぼんやりと目を覚まし、そして自分の口に突っ込まれていたゴブリンのイチモツを噛みちぎった。
「ギィィイイイ!!」
怒ったゴブリンが奇声を叫びながら、女性を殴りつける。女性は歯ぎしりしながら、怒りに満ちた目で目の前のゴブリンを睨みつけた。
「僕をリリックスワイル男爵家の三女、2級冒険者ユウ・リリックスワイルと知っての狼藉か!」
イチモツを吐き捨て、叫ぶ。すると周囲のゴブリンがわらわらとこちらへ集まって来た。
「ぎぃっ!」
「ぎぎぃっ!」
苛立った様子のゴブリンたち。その姿を見て、ほんの少しだけユウはホッとする。
(よし、いいぞ……! 僕に注目しろ。他の子の負担を少しでも減らすためにも……!)
不敵に笑ってみせるが、ゴブリンたちはユウを袋叩きにする。執拗に殴られ、蹴られるが……2級冒険者である彼女にとって、ゴブリン程度の攻撃では傷一つつかない。
「ほら、どうした? その程度の人数で良いのか? 僕は全然平気だよ?」
(それにしても、僕としたことが油断した! これは2級案件じゃない、1級……いや、下手したら超級の案件だ!)
どんなクエストでも、油断したつもりは無かった。今回だって、キッチリとゴブリンへの対策を練った上で挑んだのだ。
だというのにまさか、両手両足を地面の中に埋め込まれ、ゴブリンの苗床にされようとは。
(くそっ、クソッ! あのゴブリンメイジ、催眠を使えるなんて! ……腕は、動かない。足もか)
ただ埋められているだけならば、脱出出来ただろう。しかし何らかの魔法によって拘束されている様子だ。
自分以外にも正気に戻った人がいるだろうか――そう思って周りを見回すと、彼女よりも腹が膨らみボロボロになっているが、三人の女性が辛そうにしながらもなんとかゴブリンに対して反抗していた。
彼女らが今朝言われた、3級冒険者たちだろうか。
(僕を含めて四人か……! でもいないよりはマシか)
両手両足を地面に埋められ、四つん這いの状態で拘束されている。これをどうにかしさえすれば、逃げだすだけなら可能だ。
後はどうにか助けを呼べれば……。
「ゴオオオオオオオガァァァァァァ!!!!」
とんでもない雄叫びが聞こえて来たため、ユウは顔を見上げる。するとそこには、ユウの腰ほどもありそうかというイチモツを屹立させたゴブリンウォリアーが立っていた。
「ゴオオオオオオオギイイイイ……!」
ゴブリンウォリアーは背後に回り込み、こん棒でユウの頭を殴りつける。視界がひっくり返り、両手足に力が入らなくなった。
「……は、はは。君たちは、レディのエスコートがなっていないようだね。もっと優しく丁寧に扱う物だよ」
なんとかそう強がるが、手足が動かなくなってはどうすることも出来なかった。力なく地面に這いつくばり、ぼんやりと背後を見る。
(……あ……)
影で自分が埋まってしまいそうなほど巨大なゴブリンウォリアー。それの凶器が、ユウの腰に近づいていく。
ごくりと生唾を飲む。どうせ既にゴブリンたちに凌辱された身体だ。それに、実家を飛び出して冒険者になった時から……どうせ綺麗な身体ではいられないと覚悟していた。
だがしかし、それでも……。
「あ、やめ……」
つぅ、と頬に水が伝う。しかしその様子を見たゴブリンウォリアーは、ただただ愉快そうに笑うだけだ。
「ひぅ」
喉の奥から悲鳴に近い物が出そうになり、必死に飲み込んだ。だが、だが――もう隠せなかった。怯えを、恐怖を。
「ギイイイイガアアア!!!!」
「あうっ、ひっ……だ、誰かぁぁぁああ!」
――人生で初めてあげた悲鳴。
――人生で初めて求めた救け。
今までは全部、応える側だった。
だというのに、だとしても、
「誰か、誰かぁぁあああああ!!」
もう恥も外聞も無かった。他の子を助けるなんて微塵も浮かばない。
ただただ、恐怖に塗り潰され、誰に届くことも無い悲鳴をあげて――
「邪魔だっつってんのよ! この蛆虫ども!」
――轟音。
目の前の壁が破壊され、背中に業火を纏った女性が現れる。
そして壁の穴から入ると同時に、ゴブリンウォリアーの首をハイキック一発で落とした。
「大丈夫、私が来たわよ!」
その女性は、人生で見た中で一番美しく。
その女性は、人生で見た中で一番雄々しく。
その女性は、人生で見た中で一番逞しくて。
「このゴミどもを、一瞬で掃除するわ!」
女神はいる。そう思った。
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