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9話――ワタシたち花のメガミ組①

「イザベル様、イザベル様!」


「起きてください、朝ですよ」


 閉じた瞼の向こうから、二人の声が聞こえてくる。

 私はゆっくりと目を開けて、上体を起こした。


「…………」


「イザベル様、正気に戻りましたか!?」


「痛いところとかありませんか?」


 気遣って声をかけてくれる二人。私は彼女らに笑顔を見せてから――怒りに任せて、地面を思いっきりぶん殴った。

 トラックが交通事故でも起こしたような轟音とともに、地面にヒビが入る。


「……原作のゲームで、イザベルは言ってたわ。『この世には二種類の人間しかいない。支配される側と支配する側。わたくしは後者』と……」


 最初に聞いた時は「何いってんのあんた」と思った物だ。

 しかし――実際に催眠暗示なんていうエロ漫画でしか見たことの無いものをかけられて、理解した。

 支配されるということが、どれほど屈辱なのかということを。


「催眠で支配者気取りなのかもしれないけれど……この領地の支配者は私よ!? 誰が支配者にふさわしいか、地獄で思い知らせてやるわ」


「い、イザベル様……?」


 立ち上がると同時に、近くにあった木を思いっきり蹴り飛ばす。身の丈の三倍ほどあるそれは簡単にへし折れたので、ふん掴んで持ち上げた。


「おー、さすが原作最強の身体能力ですね」


「いやいやいや、それでどうするつもりですかイザベル様!?」


 地面にはさっきのゴブリンメイジの死骸が転がっている。彼女らが倒してくれたのだろう。


「あんたたち、ありがとね」


 素直にお礼を言いつつ、懐の水筒に『エンベッド』してアクアを呼び出す。


「『エンベッド・デュオ』」


 呪文を唱えながら拳を握りこみ、アクアを思い切りぶん殴る。すると彼女の体躯が二メートル近くまで大きくなり、魚型の頭を持った水の魔人へと変貌した。

 臨戦態勢を取った私に、二人は真剣な表情になる。


「箒を持ったらやることは一つでしょ? ーー掃除よ。やられたらやり返す……」


 カーリー、レイラちゃん、アクアを連れて私は深い笑みを作る。


「今回は百万倍返しよ!!」


「と、取り敢えず暗示は解けてるみたいで良かったですイザベル様!」


「そのドラマ見てましたね。中沢直木シリーズ」


 二人もやる気のようだし、私は鼻をふんと鳴らす。


「またあのゴブリンメイジが出てきたら、任せるわ。他の奴らはきっちり全員ぶち殺す!!」


「わ、分かりましたけどあんまり突出しないようにしてくださいね!?」


「呪術に対するガードの魔法石……似たようなのはあるのでそれ使いますね」


「それじゃあ突撃!!」

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[一言]  マリンくんこのゴリ……オランウー……怪力無双相手に互角だったの?
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