8話――サイミン×ト×ハンゲキ⑤
「これで誘き出すと」
「まぁ呪術が精神に作用するっていうなら、効きませんし。出てきたところをカーリーさんが呼び寄せて、わたしが潰します」
潰す、とは何とも穏やかではない表現。
ボクはこくりと頷いて、立ち上がった。
「じゃあまぁ、呼び寄せますんで」
「分かりました。じゃあコボット、ごー!」
コボットはしゃなりと礼をしてから、ゴブリンの巣穴に向けて歩き出す。女が出て来たということでゴブリンが数体出てくるが――それらはボクが魔力弾で狙撃して撃ち殺す。
「正確ですね」
「このくらいならまぁ」
褒められて少し得意になっていると、コボットが巣穴の入口に到達した。そして屈んだところで――先ほどイザベル様に暗示をかけたゴブリンメイジの杖が見えた。
(呪術を使えるゴブリンメイジなんて聞いたことが無い)
右手を上げ、指と指を合わせる。
(何かがおかしい、何かが変だ)
もっと警戒すべきだった。それが分かった上で――ボクは指を鳴らした。
「『クロス』」
一部でも見えていれば問題ない。視界内ならば、全部の物の『位置』を入れ替えることが出来る。
指を鳴らすと同時に、杖だけがまずボクらの前に出現する。それを蹴飛ばし、驚いたように巣穴から顔を出したゴブリンメイジにもう一度魔法をかけた。
「『クロス』! レイラさん!」
「はーい」
出現する、ゴブリンメイジ。普通の奴と違い、脳に何かが刺さっている。
それが原因か――ボクが『クロス』でその刺さっている何かを手元に取り出すと同時に、レイラさんが呟いた。
「『プレス』」
空間を握り潰すレイラさん。するとその腕の動きに合わせるように、ゴブリンメイジの顔が圧し潰された。
潰れたトマトのように血を流しながら、地面に倒れ伏すゴブリンメイジ。ボクはそれをさっと躱し、レイラさんの方を見た。
「今のは?」
「お二人も持っていると思いますよ、転生者チートです。わたしのは、圧力を自在に操れるみたいです」
規模にもよるけれど、確かに簡単に地形ごと破壊出来るだろう。そう納得させられる程の威力が見て取れた。
ボクは軽く口笛を吹いて、肩をすくめる。
「強いですね」
「そりゃ勿論。わたしも最強らしいですから」
イザベル様の方を見ながら笑うレイラさん。イザベル様の言う『私たち』に含まれる人が増えたのは少しだけ嫉妬してしまうけれど、頼もしい仲間なら大歓迎だ。
「それじゃ、イザベル様を起こしましょう」
「そうですね」
ゴブリンメイジの死体を燃やし、イザベル様を揺する。
ボクらがコンビネーション抜群で倒した事、報告したら嫉妬するだろうなーなんて思いながら。
「……そういえばさっき、なんで口をすぼめたんですか? タコさんのモノマネですか?」
口笛吹けなくて悪かったですね!!
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