8話――サイミン×ト×ハンゲキ②
「「!?」」
二人が驚いて目を見開く。グラッスは戦闘向きの使い魔じゃない。しかし、ただのゴブリンに遅れを取るほど弱い使い魔でも無い。
私達は巣穴の方を見ながら、ゆっくりと下降していく。
「魔力が途絶えたわ。……マズいわね」
「ボクの使い魔を行かせましょうか?」
カーリーの提案に首をふる。
「私の使い魔は、肉体が破壊されても消滅しないの。グラッスなら、新しいメガネに魔法をかければ同じ使い魔が出てくるわ。本体の意識や経験は、私というクラウドに保存されてるイメージね」
しかし、カーリーの使い魔はちゃんと生きてる。偵察で死んだら元も子もないわ。
「困りましたね。ちょっと待ってください」
そう言ってレイラちゃんが魔法石を取り出す。彼女が呪文を唱えると、目の色が白くなった。
「透視?」
「はい。ピントを合わせるのが難しいので、使い勝手は悪いですけど。一応……うわー、アリの巣みたいにいますね。規模だけなら、もうレギオンになっててもおかしくないです」
心底気味悪そうに顔を顰めるレイラちゃん。彼女が目を閉じると、再び元の色に戻った。
「これもう巣ごと焼き払うことも出来ませんね。焼け死ななかったゴブリンが暴走するだけで町が二、三個落ちます」
「勘弁してよ……私の領地よ……?」
領地騎士団もいないのだ。私達が食い止めないと、この領地がとんでもないことになる。
ちょっとだけ緩んでいた警戒感を引き締め直し、私は二人に指示を出した。
「私がやっぱり行くわ。ただ、二人とも後ろに待機しておいて。敵の視界に入らないくらいの距離で。……ただ、何かあったらすぐに助けてちょうだい」
私は念話とか出来ないので、ハンドサインくらいは決めておくかしらね。
「進む時はサムズアップ、警戒の時はサムズダウン、来てほしい時は手招きするわ。OK?」
二人が頷く。私も頷き返し、ウインを連れて巣穴の方へあるき出す。
(うっ……わぁ)
とんでもない臭い。鼻が曲がりそうとはこのことね。
一歩ずつ近づく度に吐き気が増していく。と言うか臭すぎて涙が出てきた。
「う、ウイン……お願い」
風を吹かせ、少しでも臭いを向こうへやる。あんまり意味は無いけど、気休めくらいにはなる。
今すぐ帰ってシャワーを浴びたい気持ちを抑え、巣穴の前へたどり着く。
「キキッ」
「キェッキィーッ!」
私に気づいたゴブリンが5匹ほどこちらへ襲いかかってきた。
前から来る4匹はウインの風の刃でずたずたに切り裂き、背後に回ってきた最後の一匹は後ろ回し蹴りで首を飛ばした。
練度が高いわけでもなければ、個体として強いわけでもない。普通のゴブリンね。
私が少し眉根に皺を寄せていると――巣穴の中から、さらなるゴブリンが。
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