8話――サイミン×ト×ハンゲキ①
空を飛ぶこと数分。私たちの前には、小高い丘が見えて来た。どうもここに横穴を掘って、巣を作っているらしい。
「なんとも小癪ねぇ」
「巣穴を掘ってるってことは、割と最初の方にボギーゴブリンが出たんでしょうね。あれは薄暗い場所を好みますから」
レイラちゃんが解説してくれる。錬金術師ってのは魔物にも詳しいのね。
私達は空中で浮いたまま、巣穴を観察する。ひっきりなしにゴブリンが出たり入ったりしているが、肝心の上位個体や……いるか分からないけれど黒幕っぽい物も見当たらない。
こうなってくると、外から様子を伺うだけじゃ何も分からない。私は一つ伸びをして、二人の方を見た。
「じゃあ私、行ってくるわ」
「ちょっ、何言ってるんですか!?」
「……ゴブリンの巣穴に女性が単身で乗り込むなんて自殺行為。ご自身でそう仰ってませんでした?」
カーリーとレイラちゃんが驚いたようにこちらを見る。レイラちゃんは驚きというより、呆れ顔かしら。
「だってカーリー、あんたは回復魔法とか使えるでしょ? レイラちゃんは……」
「まぁそういう魔法石もあります」
緑色の魔法石を取り出すレイラちゃん。太陽光を反射して輝くソレは、なんとも言えない怪しい雰囲気を醸し出している。
「回復手段がある魔法使いに、先行させるわけにいかないわ。もちろん、ひとまず使い魔に偵察させてからだけどね」
今日の私は戦う準備もバッチリだし、いくら2級冒険者が負けてるとはいえ……逃げるくらいは出来るだろう。
そう思いながら、私は懐から取り出したメガネをグラッスに変化させた。
「さ、いっといで」
物を見る使い魔、グラッス。背の羽をはばたかせ、巣穴に向かって飛んでいった。
「これで戻ってくれば、中の様子がどうなってるか分かるわ」
「イザベルさん、魔法使いでもないのに使い魔……うーん、どっちかっていうと式神みたいなやつを使えるんですね」
レイラちゃんが物珍しそうに私の手を握ってしげしげと眺める。
そういえば彼女に魔法の説明してなかったわね。
雇うと明言した以上、隠す必要も無い。グラッスが帰ってくるまでの間、少し話をーー
「!?」
ーー私は驚いて巣穴の方を見る。その様子を見たカーリーとレイラちゃんが、緊迫感を漂わせながら生唾を飲んだ。
「どう……しましたか?」
カーリーの問いに、私は長く息を吐きながら答える。
「グラッスがやられたわ」
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