1話――見知らぬ、天蓋ベッド-③
「まぁ、今更驚かないわ。っていうか、借金が一個? もっとありそうな物だけど」
「正確には明日までに返さないといけない借金ですね。額だけなら……」
「あー、いいわいいわ、聞きたくない。……面倒くさいわねぇ」
私は虫でもはらうように手を振る。そして昨日から数えて何度目か分からないため息をついてから、彼女に手を差し出した。
「情報とか無いの?」
「こちらです」
そう言って渡された書類は、なんというか頭を抱えたくなる……なんて次元じゃない内容だった。
まずこの国には銀行というシステムが無い。
殆どの職業が組合を作っており、商人なら商人組合から、冒険者なら冒険者組合から援助が得られるなどの相互扶助で成り立っているからだ。
しかしそれでも金貸しという職業はある。やっているのは大きな商会などで、そこそこちゃんとした金利でやっているので問題ない。
……が、金貸しがいれば闇金もいるわけで。
「ウマジマくんの世界ねぇ」
「あの漫画、面白かったですよねー。ただまぁ、その中でも比較的良心的というか……いや闇金に良心もへったくれもないんですけど。それに一度に返す金額も大したこと無いですし」
確かにカーリーの言う通り、一般的な(?)闇金のイメージである十一では無い。二十日で一割……まぁ、闇金の中では良心的だ。
「ねぇ、契約書ある? 無いってことは無いでしょ」
「あります、ちょっと待っててください」
そう言って部屋から出ていくカーリー。取りに行ってくれたので、待ってる間に紅茶でも準備することにする。
幸い、ティーポットやティーカップは部屋の棚に置いたあった。公式サイトには紅茶を淹れるのが趣味と書いてあったし、イザベルの私物だろう。
アクアとフレアにお湯を沸かしてもらい、ちょうど沸いたところでカーリーが帰ってきた。少し遅かったが、そんなに遠かったんだろうか。
「戻りまし……何してるんです?」
「遅かったわね。紅茶を淹れてるのよ。あんたも飲むでしょ?」
「あ、はい。ありがとうございます」
カーリーの分のカップを用意し、紅茶を蒸らしている間に契約書に目を通す。
……すると、案の定困ったことが起きていた。
「リボ払いェ……悪名高いリボ払いを異世界で導入してるとか、この闇金なかなかやるわね」
「いやイザベルさん感心している場合じゃ……って、リボ払い? なんですかそれ」
「簡単にいえば、『毎月、決まった額だけ返せばいい借金』ね。どれだけ借りても、一定額よ」
「え、便利じゃないですか。やっぱりここの闇金は良心的ですね」
断言しよう、こいつは元の世界にいたら絶対にマルチ商法に引っかかる。
……いやまぁ、十歳で死んでちゃその辺の知識が無くても当たり前か。
「あのねぇ」
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