6話――我儘の錬金術師⑤
私がおうむ返しにそう言うと、レイラちゃんは残念そうに頷く。
「未完成なんですよ。えっと、本来の賢者の石ってどういう物かご存じですか?」
「バカにしないでください。少しでも教養のある人なら誰でも分かります」
教養が無くて悪うございましたね!!
私は隣に座るカーリーの太ももをつねる。彼女は「ぴぇ」とか変な声を出してこっちを睨むが、私は知らんぷりだ。
「痛いですよ、イザベル様!」
「知らないわよ。ほら、教養の無い私に説明してちょうだい」
唇を尖らせてそう言うと、カーリーはちょっとだけ申し訳なさそうな顔になる。
「……そんな拗ねないでくださいよ、ボクが失言でしたから。えーっと、『何度でも何にでも成る石』でしたよね」
頷くレイラちゃん。
「ただそれはあくまで理想……というか錬金術師の夢です。それに近づくため、皆頑張って研究しています。そしてわたしの作れた『賢者の石』は、『一度だけ、どんな魔法石にでも成る石』でした。わたしは『賢者の石・L』って呼んでます」
また出た、魔法石。
ここで知らないというと、また教養が無いとか言われちゃうかしら。
そう思ってカーリーを見ると、彼女が何か察して口を開いた。
「魔法石っていうのは、簡単に言えば『魔石の要らない魔道具』です。魔石と魔道具は知ってますよね?」
「もちろん」
原作の『ダンプリ』にも出て来たし、アニメでも説明があった。魔石は電池で、魔道具は家電。
ダンジョンで発掘されるか、もしくは専門家が手作業で作る一点もの。
「この世界のご都合的な部分はだいたいそれで解決出来る便利アイテムよね」
「無茶苦茶言いますね……。それで魔法石は持ってるだけで、魔法が使えるアイテムです。ダンジョンの最奥にあるか、もしくは錬金術師だけが作れます」
それは確かに貴重な物ね。さっきカーリーが目の色変えて慌てたのも理解出来る。
「補足しますと、錬金術師でも魔法石にどんな魔法でも籠められるわけじゃありません。どんな錬金術師でも、多くて二、三種類しか作れない物なんですよ」
「だから流通量が増えることもなく、バリエーション豊かな魔道具が主となってるわけです」
レイラちゃんは青い魔法石を取り出すと、私に渡した。
「『水よ』って言ってみてください」
「『水よ』。……あら」
水が魔法石から零れ落ちてくる。なるほど、これは便利ね。魔力も要らないし、簡単なワードで使える。
「それで、あんたの作る『賢者の石・L』は……」
「要するに『魔法石に変化する魔法を持つ魔法石』ですね。ただこれを狙った魔法石に変化させられるのは作成者であるわたしだけです。だから、その組織にある『賢者の石・L』は既に何らかの魔法石に変化しています」
その変化した能力が『人間と魔道具を合体させる』魔法なわけね。
彼女の目を見つめるが、特段嘘をついている様子は無い。彼女の言っている内容に違和感も見当たらないし、一先ず信用していいだろう。
「取り合えず、魔法石と賢者の石については分かったわ。あんたの言う通りだとすれば、組織とのつながりもない様ね」
「ご理解いただけたようで何よりです」
カーリーはまだちょっと疑っている様子だが、私はひとまず信用することにする。
万が一組織の人間だとすれば、改造人間総出で来ればいい話だ。いくら『賢者の石・L』があっても、私達二人を相手に勝てるとは思えないしね。
「というかそんなとんでもない物作れるなら、イザベルのところに来るのも納得だわ。あの贅沢好きなら言い値で買いそう」
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