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6話――我儘の錬金術師②

 だから誰かに恨みを買っているという可能性は低い。オルカの手下やカムカム商会の残党かもしれないが、だとすればただのチンピラ。まるで脅威じゃない。

 残る可能性は――


(組織、ね)


 ――ゲームに登場していない、謎の存在。否応なしにこの世界が『ゲーム』ではなく『現実』であると突き付けてくる組織。

 カーリーも同じ結論に行きついたのだろう、険しい顔をしてこちらを見ている。


「ん、ああ。出てこられたんですね」


 物音も立てていないのに、私たちの存在に気づく壁の向こうの人物。そして次の瞬間、私たちは触っていないのに音を立てて鍵が開いた。


「「!」」


 驚いて私たちが目を見開くと、扉の向こうから出て来たのは不健康そうな女性。蒼い瞳、目の下にはクマ。群青色の髪をゆるい三つ編みにしており、化粧っけの無い顔。

 指まで隠れる程に長い袖の白衣、その下には何故かセーラー服。

 極めつけはその高身長……たぶん百八十近いわね、この子。


「こんにちは、初めまして。わたしはレイラと申します。気軽にレイラちゃんとお呼びください」


 お辞儀をするレイラちゃん。取り敢えず敵意や殺気と言った物は感じられないので、一旦私たちも戦闘態勢を解く。

 顔をあげたレイラちゃんをもう一度よく見ると……不健康そうで隠れているけど、かなり美人系の顔立ちね。これは磨けば光るわ。

 ……と、私の可愛い女の子センサーが発動したところで、レイラちゃんは笑みを作る。


「イザベル様、そろそろ暑い日が来ると思うのですが……死体の処理にお困りとか無いですか? 今なら、無料で全部ダイヤモンドにしちゃって処理しますよ!」


 目を輝かせながらそう提案してくるレイラちゃん。……えっと、この子は何を言っているのかしら。

 彼女は私の隣に立つカーリーを見ると、眉に皺を寄せて首を傾げる。


「あれ……そんな側付きの子、ゲームにいましたか?」


 驚きというよりも困惑した表情。しかしその発言を聞いて、私とカーリーは殆ど同時に反応する。


「ゲーム? ……ってことは」


「もしかして、あなたも転生者ってことですか?」


「へ? あんたも……ってことは、イザベル様もですか?」


 否定しないレイラちゃん。まさかの、転生悪役令嬢者なのに……同じ空間に三人も転生者が揃うという事実。しかも三分の二は原作に登場しないキャラ。

 っていうか私も元をただせば原作に登場しないキャラのはずなんだけどね!


「じゃあ……あれ? この時期くらいからイザベル様が奴隷とかを虐め殺したりしてるはずなのに……? 死体がたくさんあるはずじゃないんですか!?」


「いやそんなこと聞かれても困るわよ! というか、ゲーム通りに進んでたらその時期は四年後くらいよ! まだ世界はダンスとアイドルに夢中になってないのよ!」


 というか、割とこの世界現実感漂う感じで進んでるけど……本当に二年後にはあんなダンスとアイドルの世界になるのだろうか。

 私がそう言うと、レイラちゃんは露骨に不機嫌そうな顔になる。


「はぁ……ここに来れば死体が手に入り放題だと思ったんですけどね……」


 ……だいぶサイコね、この子。

 何が一番アレかって、たぶん死体なら割とたくさんあるのよね。3日前に刻んだ連中がいるから。

 とはいえアレは見せたくないし、そもそも死体の処理に困るような生活をする予定は無い。


「というわけで、あんたの期待には応えられそうにも無いわ。悪いけど、他を当たってちょうだい」


「うーん、まぁ予定とはズレましたけど、取り敢えずわたしのこと雇いませんか? 役立ちますよ?」


 おっと、まさかの倍プッシュ。この子は割とメンタル強いわね。

 私が面食らっていると、カーリーがため息をついてレイラちゃんを指さした。


「確かに凄い魔力ですけど、イザベル様にはボクという最強の魔法使いがいるんです。もう魔法使いは間に合ってるのでお引き取りください」


 むっとした顔でレイラちゃんを睨むカーリー。レイラちゃんはそんな彼女を見て、首を振った。


「わたしは魔法使いじゃ無いですよ。でも魔法使いさんが欲しがりそうな物なら持ってます。ほら」


 そう言いながら、懐からいくつかの石を取り出す。それらを見たカーリーが目をまん丸にして驚いた。


「なんですかこの純度の高い魔法石! ぼ、ボクも本でしか見たことが無い!」


 魔法石って何よ、知らないワードをさも常識のように語らないで欲しい。

 カーリーは目を輝かせつつ、レイラちゃんの出した魔法石を手にとって眺める。私はカーリーの肩を掴み、こちらへ引き戻した。


「ちょっと二人で盛り上がらないで。そんな希少な物をこんなに持ってるなんて、あんた金持ちなの?」


 なら金主になってもらえないかしら。

 私がそう思って問うと、彼女は首を振った。


「これらは私が作ったんですよ、錬金術師なので。あ、でも……お金が欲しいなら、死体じゃなくとも人肉があればダイアモンドに変えれますよ!」


「人肉をダイアモンドに変えるんじゃ無いわよ! 倫理観が終わってない!? って、錬金術師!?」


 それを聞いた瞬間、私とカーリーは再度戦闘態勢を取る。しかし、レイラちゃんはキョトンとした顔で私達を見た。


「どうされました?」


「カーリー、あんた言ってたわよね。錬金術師なんて変態しかならないって」


「変態しかならないとは言いませんでしたけど、滅多になろうとする人はいません。しかも、このレベルの魔法石を作れるなんて――たぶん、一世代に一人か二人くらいしか現れません」


 そしてカーリーが感嘆するレベルの錬金術師。賢者の石を作れないことは無いだろう。

 私達の警戒度が上がったことに気づいたか、レイラちゃんはちょっと困った顔になった。


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