44話――ライウェイベイビー④
私はもう少し気合を入れて、本気になる。腰を落とし、足をパンと叩いた。
「喧嘩殺法でごめんなさいね」
「なんでご令嬢が喧嘩慣れしてるんですか?」
地面を思いっきり蹴りつけ、マークの懐に飛び込む。マークは模擬剣で切りつけて来たが、私はそれを手の甲を弾いて膝蹴りを腹に叩き込んだ。
体をくの字に曲げて、よろめくマーク。下がった顎をアッパーでかち上げ、足を百八十度に開いて超至近距離の回し蹴りを食らわせた。
「ふぐっ!?」
バウンドして壁に叩きつけられたマークは、すぐに起き上がると剣を投げてくる。
それを回避した――と思った瞬間、私の後ろにマークが回り込んでいた。
(転移? いえ、ミスディレクションと歩法ね。やるじゃない)
自分で投げた剣をキャッチし、横薙ぎに振るってきた。私はしゃがんで回避し、両手を地面について水平蹴りで足を払った。
「ぐっ!?」
右足が変な方向に曲がり、その場に倒れ伏したマーク。ちょっと力を入れすぎたらしい、折っちゃったわね。
私はふぅと息を吐くと、レイラちゃんの方を見た。
「レイラちゃん、治してあげて――」
「――イザベルさん、後ろ!」
レイラちゃんの鋭い声。私が急いで振り返ると、マークが左足一本で立ち上がって、私の目を突こうとしていた。
鬼のような形相、本気の目。私は咄嗟に否定で受けて、模擬剣をへし折った。
グシャッ、と金属からは鳴らないような音を立てて崩れた模擬剣。私は前蹴りでマークを壁に押し付けた。
「がぶっ……」
ベキベキベキ! と骨の折れる音が響く。そしてマークは血を吐いて、気を失った。
「イザベル様ァ! だ、だだだ大丈夫ですか!?」
ものすごい速度で駆け寄ってくるジージー。私は足を離し、彼の方を振り向く。
「大丈夫ですわ。傷もありませんし」
そう言って額を見せる。刃引きされた剣で傷つくほど、やわな肉体はしていない。
しかしジージーは大慌てで、救護班を呼ぶ。
「イザベル様を救護室に運べ! マークにヤツ、頭を狙うなんて何を考えているんだ!?」
「いやホント、大丈夫ですのよ?」
むしろ足と肋が折れて血を吐いているマークを、看てあげたほうがいいんじゃないかしら。
私が鎧を脱がしてもらうと、救護班の人が私に駆け寄ってくる。
「だ、大丈夫で……嘘、剣があんなことになってるのに傷一つ無い……?」
「赤くなってもない……あれ、えっと……あの、耳は……?」
「別に平気よ」
私は床であぐらを組んで座り、ジージーの方を向いた。
「マークはいいの?」
「命令無視は規定違反ですので、しばらく放置します」
あら厳しい。
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