43話――もうすぐ夏ですね⑥
304部分
(……じゃなくて、ちょっと話のそらし方が雑且つ急すぎる……)
でも、ここまで堂々と話を逸らされると、逆に話をツッコミづらくなるわね。
……うーん、ちょっと探りを入れさせましょうか。ジージーから聞けない以上、マリンたちに動いてもらわなくちゃならない。だからまずは、そのために、騎士団を釘付けにしておきましょうかね。
私はカーリーに目配せしつつ、ヒョイと手を挙げる。
「じゃあ、私が着てみるわ」
「へ? い、イザベル様が……ですか?」
きょっとーん……と、鳩が豆鉄砲をくらったような顔になるジージー。
目をパチクリさせ、意味がわからんとばかりに首を傾げた。
「えっと……その、イザベル様が着られる……のですか?」
「ええ、お願い」
私が言うと、ジージーは「わっはっは!」と大きな口を開けて笑い出した。
「馬鹿を言わないください。そんな、鍛えもせぬご令嬢の細腕では無理ですよ! というか、女性では鍛えても無理です!」
冗談だと思っているのだろう、後ろのマークもクスクスと笑いながら……ちょっとだけ馬鹿にしたような目で私を見る。ジージーは馬鹿にはしていないのだろうが、まるで駄々っ子に対応するような表情で呆れながらポンと鎧に手を置いた。
「お言葉ですが、イザベル様。こちらは生半な鍛え方では、そもそも能力を使わずとも動かせませぬよ。騎士ですら、新兵では到底無理な代物で――」
「――カーリー、あっちにお願い」
パチン!
フィンガースナップの音。その瞬間、私は訓練場の真上に転移していた。
スカートを抑えながら、騎士たちのど真ん中に着地。騎士たちが「何が起きたか分からない」という目で見てくるので……私はその辺の騎士から訓練用の剣を受けとる。
「ちょっと素振りしてみて良い?」
「な、なにを……えっ、あの……」
私から剣を取られた騎士が、困惑した表情で窓の方を見た。ジージーは窓に張り付くと、ぶんぶんと首を横に振る。
確かに勝手に振られて怪我でもされたらいやでしょうしね。だから私はそれを無視して、真横に思いっきり振り抜いた。
「それっ」
パン! と音速を越えた時特有の、空気を破壊する音が訓練場内に響く。そして訓練用の剣は衝撃に耐えきれず、粉々になってしまった。
「案外脆いわねぇ。それで、ジージーさん。着せてくださらない?」
今度こそ、窓に向かって素敵な笑顔を向ける。
ジージーは、快くうなずいてくれた。
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