6話――我儘の錬金術師①
カムカム商会の件が片付いて、三日。明日、取り合えず現金が入る。
その大部分は借金を返すことと治水の支払いに充てるわけだが、それでも多少は現金が残る。それがデカい。
「カムカム商会を合法的にマリンに引き継がせた上で私が登記上の社長になったし、ここの金は強引に引っ張ってこれるけど……それでもねぇ」
とにかく金が無い。
こうなったら冒険者さながらにゴブリン退治でもして、日銭を稼いでやろうかしら。
「いやー、流石に明日食べるご飯はありますからそこまでしなくとも。いったん、休憩にしませんかー?」
カーリーが鼻歌交じりにクッキーを持ってきてくれる。彼女はお菓子作りが趣味だと言うだけあり、クオリティは高い。
今は外でマリンに庭掃除させてるけれど、彼も呼び戻して一緒にお茶にしようかしらね。
「お茶、いる?」
「いりますー。イザベル様、ちょっと根を詰めすぎですよ? どうせなるようにしかならないんですし」
なんで元凶であるこの子にこんな励まされ方をしているのかしら――という疑問は浮かびつつも、確かにと思い直す。
直近の課題は、カムカム商会が残した娼館街の立て直し。そのためにも手を入れたいのだが、人手が足らない。
マリンが人手を集めてくれるとは言ってくれているけれど、彼だって本当に私たちに協力的かもまだ判断がついていない。
とはいえ、持ってる娼館の把握は済んだし、後は店長が誰かを知ればそっちから変えていくことも出来る。
「頭を取り替えないで済むように、もうちょっと領法の整理も必要だしね」
金融系も、娼館の方も……両方の領法を整えないと『合法』、『非合法』の区切りが出来ない。
金を調達する手段を手に入れてからじゃないと、金融の方は整えられないしね。
「カムカム商会がもっと真っ当だったらなぁ」
「愚痴っても仕方ないですよ――っと、お客さんですか?」
カーリーが玄関の方角を見る。私には感じ取れないけれど、魔法使いである彼女なら分かる何かがあったのだろう。
「誰か来てるならマリンも、一緒に庭の手入れをしてる鋏とジョーロが気づくだろうし」
「いえ、魔力です。しかもボクまではいきませんが、相当の力量。……でもそのレベルの魔法使いがなんでここに?」
いきなりシリアスな表情になるカーリー。彼女がかなり緊張しているのを見て、私の緊張感も増す。
今日は誰も使用人を呼ばない日で良かった、荒事になったら間違いなく巻き込まれてる。
私はウインとフレア、アクアを隣に呼び出してカーリーに頷いた。彼女も杖を出して準備万端にして、ドアの方へ向かう。
「あのー、イザベル様っていらっしゃいますかー?」
二人で戦闘態勢に入りながらドアの前に立つと、そんな呑気な声が聞こえて来た。私の方をご指名とはね。
(この段階なら、まだ私は悪さをしてないはずだけど……)
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