42話――令嬢ストレイドッグス⑤
ある程度楽観的に考えてもいいだろう。
どうせ、私は十重二十重に策謀を弄するタイプじゃない。出たとこ勝負、行き当たりばったり、でもその場の機転で切り抜けるタイプだ。
大枠で方針を決めたら、後は野となれ山となれ――よ。
「機転って……イザベルさんのそれは、そんな良いものじゃないのでは? 筋肉とパワーで強引に解決してるだけなんじゃ……」
「シャラップよレイラちゃん」
良いじゃない、解決してるんだから。
「なんというか、困ったら相手に手を出させて『はい、アイツ手ぇ出したー! 向こうが悪者ー!』ってレッテル貼りして切り抜けてるよね女神」
「手を出すまで挑発して、いざ出されたら暴力で解決って……反社会勢力そのものじゃありませんの」
「いやぁ、本来その塩梅って難しいんスけどねぇ。裏だとそれで先手を打たれた挙句、全滅させられることだってあるッスから」
「イザベル様の場合、相手に『勝てる』って勘違いさせるのが絶妙ですよね。一見するとまるで深層の令嬢ですもん。体重百二十キロもあるくせに」
「体重は関係ないでしょ!?」
ホント、どんな筋線維してんのかしらねこの体。
ちなみに最近、また五キロ増えて現在は百二十五キロ。なのに女の子らしい柔らかい肌は保ててるんだから本当に不思議な肉体だわ。
前の世界で鍛えてた時、流石に若干筋張っちゃったもの。
「っていうか、今回は殴ったり殴られたりの展開にはならないわよ。ラピスラズリ商会の時だってそうだったでしょ?」
「あの時も結局血みどろになりましたけど、まぁ交渉の部分だけは普通に終わっていましたね」
「女神にしてはちゃんと交渉していたね」
ユウちゃんにまで私は交渉下手と思われているらしい。……いやまぁ、否定はしないけど。
今後はある程度知識を授けた上で、シアンに交渉の流れや政治手腕は習った方がいいんでしょうね……。
私が嘆息していると、窓からシアンが窓から身を乗り出して「あっ!」と弾んだ声を出した。
どうしたのかしらと私たちも逆側の窓から外を見ると――
「やっと見えてきましたわ! ワナガーカ!」
「うわっ、都会!」
「いやイザベル様、第一声がそれですか」
――そこには、背の高い建物と色とりどりの真っ赤な看板。マイターサじゃ見られないような、まさに『都会』な光景が広がっていた。
ここがワナガーカで最大の町、ハコヨマね。
「さぁて、腕が鳴るわねぇ」
果たして今回は、どんな旅になるのかしらね。
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