42話――令嬢ストレイドッグス①
「……しゃ、シャオソーさん……?」
「どうも、長い悪夢を見ていたようで……」
翌朝――。
目をまん丸にして驚いているセイムス男爵と、何が何やらという様子のシャオソー……いや、シャオソー特任大使。
数年来の友人という話だけど、お互いにどこかよそよそしい。それもそのはず、シャオソー特任大使はこの地に来る前に既に入れ替わられていたのだから。
セイムス男爵にとっては、友人が別人になり……シャオソー特任大使にとっては気づいたら知らない人が友人と言っている状況。気まずいなんてモンじゃないわね。
「さて、今説明した通り彼は……まぁ、悪の組織的なサムシングに捕まって洗脳されていたわけです。で、その『組織』の主な狙いは他国の乗っ取り。既にセンタルハーナ共和国はやられたのかもしれません」
そしてこのソウテン王国も、割とマズい状況に違いない。というか、あのダンスの世界になることはほぼ確定している以上……王手はかけられていると見るべきか。
「そんな事が……あり得るのかいイザベル」
「現に目の前に起きているではありませんか。どのみち、真相を知る元の人格は崩壊してしまいましたからこれ以上詳しいことは分かりません」
「崩壊って……無責任過ぎるだろう、それは。騎士団に引き渡し、情報を得るなどのやり方があったはずだ」
「わたくしよりも長い期間知り合いで、いつでも騎士団に引き渡すチャンスがあったのに……騙され続けたおじさまに言われたくありませんわ」
私が冷めた目で言うと、セイムス男爵は黙ってしまう。やっぱり昨日の出来事があったから、セイムス男爵からの好感度は非常に低いわねぇ。
まあ、彼からの好感度を回復させるためにシャオソー特任大使を連れて来たんだし、上手いこと誤魔化さないとね。
「でも……おじさまの仰っていた通り、先に話し合いをしたからこの通り彼の洗脳を解くことが出来ましたわ」
「……そうなのかい?」
「ええ。今までのわたくしでしたら、先に倒してしまっていましたから。おじさまの説得のおかげで、こうしてシャオソー様の命を救うことが出来ましたの」
本当はレイラちゃんのミステイクだけど、馬鹿正直に言う必要はない。
私は極力優しく微笑み、シャオソー特任大使を手で示す。
「ただ同時に、わたくしが弱ければ彼をここに連れて来ることなど出来ませんでしたわ。追手は凄かったですもの。やたらと戦力を増やすことはよくありませんが、やはり問題解決のために十分な力は必要ですわ」
「……そうかい」
イマイチ響いていない様子だけど、少しだけ眉根による皺が少なくなった。セイムス男爵は大きく息を吐くと、苦笑しながら私を見る。
「しかしその考えは……この国を内側から喰い破るために広められた誤った物と言いたいんだろう? だがやはり、騎士団を拡大することは平和につながらないと思う」
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