41話――暗夜街のメデューサ③
「まぁ、こうなるわよねぇ」
「がっぺっ……!?」
蹴りを腹に叩き込み、壁にめり込ませる。とりあえず、これで動けなくなったかしらねぇ。
首を大きく回してストレッチしつつ、彼の前に立つ。
「こうして攻撃してきたってことは、アンタは『組織』の人間ってことで良いのよね?」
「だ、だったらどうする……! フフ、もう本物のシャオソーは死んでいるぞ……」
「いやその人が生きてるかどうかはどうでもいいのよ。重要なのは、アンタが何をしようとしているか。それを説明してくれるかしら?」
私が問いかけると、シャオソーはグッと黙り込む。黙秘権なんてこの世界にあるわけないのにね。
というわけで、私は彼の首を掴んだ。
「まぁ、じゃあ殺しとくわ。一人でもあの思想を流すやつを殺しておけば良いし」
「なっ、わ、私を殺したら『組織』が黙っていないぞ!」
「もう既に何回も『組織』とは事を構えているから、別に良いし……」
そう言いながら首を掴んだ腕に力を込めると、シャオソーの首からミシミシと音を立てだした。
それを聞いたシャオソーはブンブンと首を振って、私の腕をそっと握った。
「ま、待て! わ、分かった話す、話す! 話すからやめてくれ!」
「あら、案外根性ないのね」
手を離すと、ゲホゲホと咳き込むシャオソー。私は彼の腹を踏んづけ、首をかしげる。
「じゃ、あんたの任務について教えて頂戴」
「……そ、ソウテン王国の騎士団を弱体化させ、我ら『組織』が権力を握る下準備のために……貴族の間にセンタルハーナの文化を広めつつ、民衆に支持を得られた者の権限を高めるという思想を広めている」
「ふぅん……」
回りくどい言い方だけど、私たちの仮定がだいたい合ってたってことみたいね。
「なんでそんな迂遠なやり方をするのよ。乗っ取れるんでしょ? ソレで王子なり王なりと入れ替わればいいじゃない」
「……そう簡単にはいかない。私のような成代者は、極力権力のある者とは成り代わらないようにしているからな」
……新しいワードを出さないでよ。ダンプリの世界にそんなややこしい設定いらないから。
っていうか、その権力を持つ人間と入れ替わらない理由を聞いてんのに、同じことを繰り返してどうするのよ。
「だからソレはなんでなの?」
舌打ちしたい気持ちを抑えて再度聞くと、シャオソーは口を開いた。
「ある程度の期間、拘束する必要があるからだ。転生の石による施術は時間がかかるからな」
また新しい情報が……。




