41話――暗夜街のメデューサ②
中に入ってきたのは、屈強な男達ーーの首根っこを掴んで引きずる私の仲間たち。
目を見開いて驚くシャオソー。
「な、ななな……」
「イザベル様、ボクらに任せてくれるのはいいんですけど……弱すぎますよ」
「残念だけど、ぼくらと戦うには鍛錬が足らないね。忍び込んだことに気づくのも遅かったし」
「親父の商会ならギリギリ兵隊になれたかもな」
ローブを被ったちんちくりん、男装の令嬢、とびきり可愛いメイド。そしてその後ろから、溜息を付いた黒髪の女が何らかの書類を持って出てきた。
「わたくしはそこの脳筋と」違って知性派ですので、ちゃんと証拠を押さえましたわよ」
「誰が脳筋肉よ、でもでかしたわ」
理解が追いつかず、頭にはてなを浮かべるシャオソー。なぜセンタルハーナから連れてきた精鋭が、こうも簡単に敗れるなんてありえない。
コイツらは何者ーーいや、そもそも今何が起きている!?
「何が目的だ? 金か、それとも……」
「アンタのお友達、セイムス男爵をご存知? 彼との交友を止めたうえでーー騎士団を減らすことが、臣民のためになるって思想をどっから持ってきたのか教えてくださいな」
ーー思想の出どころ?
その発言を聞いて、やっと察する。彼らは政府側の人間……それも、暗部組織に属する人間だ。
シャオソーはニヤリと笑うと、立ち上がる。
「どこから聞きつけたのか知らないが……私は何か悪いことをしているかね?」
「いや別に悪いことしてるかは別に良いのよ。もっと言うなら、アンタが『組織』の人間かどうかが重要なのよ」
女が言ったセリフに、シャオソーはますます笑みを深めた。
こいつは我ら『組織』を知りながらこうしてカチコミをかけてきている。つまり稀にいる、『組織』を利用しようとして近づいてきている輩ということだ。
それがどんな結果をもたらすかも知らずに。
「メデューサ、貴様がどの組織に属している人間か知らないが……相手を見るべきだったな」
首を回し、指を鳴らす。チンピラのような仕草だが、バカを威圧するのにはちょうどいい。
シャオソーは笑いながら、メデューサの前に立った。
「その名前を出した瞬間から、貴様らの運命は決まってしまった。さて……ククク、そのちんちくりん以外は売れそうだし、成りすますにも好都合」
「ちょっ、今ボクのことちんちくりんって言いませんでしたか? ねぇ、言いましたよね、言いましたよね!?」
喚くちんちくりんを無視して、シャオソーは笑みを深めた。
バカを刈り取り、再び金にするために。




