40話――貴族の思想のヤバいやつ④
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「まとめると……ダンス世界の真の狙いは分からないけど、その過程で間違いなく国防力を削られることになる。そして、そのための思想は既に貴族界隈でばら撒かれている」
「おじさまが数年来の友人に言われたと仰っていましたものね」
セイムス男爵が私に語って聞かせた話は、かなり支離滅裂だった。断片的に聞かされた情報を、そのまま垂れ流しているような感じ。
でも、彼はあまり社交界とかで他の貴族との交流が無いからその程度で良いと思われて敢えて情報が絞られていたのかもしれない。
「仲間を増やす役目を与えられた人は、もっと細かく思想を植え付けられているかもしれないわね。この流れのまま広がると、少しマズいわよ」
「でも思想って止められなくないですか?」
「実際、原作ゲーム世界ではそれが止められなかったから――あんなとんちきな世界になったんでしょうしね」
レイラちゃんはそう言いながら、再度アイマスクをつけた。もう話すことはお終いと言わんばかりに。
「現状、我々が止めるのも難しいでしょうし……イザベルさんなら、やるべきことは分かってるんでしょう?」
「まぁね」
確定事項じゃないにせよ、この思想を起点にあんなトンチキ世界に変える。そして、その後ダンスで成り上がっていくのが『組織』の目的なのだとしたら……もう止められない段階にいるんでしょうしね。
「オルカを使って、マイターサの裏から支配しようとしていた。ガーワンを支配してマングーを支配しようとしていた。そのどちらも、偶然私が破壊した。だから都度、破壊しておかないとね」
「……えーっと、まさかとは思いますけれど」
「その友人とやらも洗脳されてる、ないしただ馬鹿なだけなら何もしないわ。でも『組織』なら踏み潰しておきましょ」
ニッコリと笑みを浮かべる。
そう、レイラちゃんの言う通り……思想という形で貴族の間に『組織』の手が伸びているのならば、その元を潰すことは出来ない。
だから、対症療法。そして、いざとんちき世界になった時に対応できるような仲間作りが重要になってくる。
「マリン、ユウちゃん、シアン。もう一回使用人室なりなんなりで情報を集めて来てもらっても良い?」
「了解ッス」
「その友人を突き止めればいいんだね」
「……切り替えが早いですわね。思い付きで行動してるんじゃありませんの?」
アンタに言われたくないわよ。
正直、思い付きで行動してるところめっちゃあるけど。
「じゃあお願いね」
三人に言うと、皆笑顔を向けてそのまま部屋から出て行った。
さて、じゃあ私は……本格的に深夜になるまで休憩しておきますかね。




