40話――貴族の思想のヤバいやつ①
「やっちまったわ!」
「やっちまったじゃありませんわよこのおバカ!!」
さて、夜。割り当てられた寝室にて。私は思いっきり後悔して頭を抱えていた。
シアンは目茶苦茶怒ってるし、カーリーもプンプンと腕を組んで私を睨むしーー他のみんなは呆れた顔でこっちを見てくるし。
こんなの、もう飲むしかないじゃい。
「マリン、お酒持ってきて!」
「どうぞっす」
そう言ってマリンが差し出してくれたのは、瓶ビール。しかもグラスがキンキンに冷えてる。なかなかやるわね、マリン。
「まさかあんなに阿呆と思わないじゃない」
「それに関してはボクもそう思いますけど、だからって蹴ったらマズイですよイザベル様」
仰っしゃる通り。私は瓶の上部を手刀で切り落とし、ビールをコップによくよく注いだ。
そしてグイーっと一気飲みし、勢いよくテーブルに置く。
「ぷはぁっ! もう一杯」
「あんまり飲みすぎないでくださいよ?」
「大丈夫よ、最近この体もアルコールにだいぶ慣れてきたし」
ガーワンの屋敷で飲まされたときに比べて格段に飲めるようになってる。やっぱり夜遊びで鍛えるのは大事ね。
マリンが注いでくれたビールをもうひとくち飲んでから、シアンの方を見る。
「シアン、前からあんな風だったの?」
「ええ、おそらくは。わたくしが協力を仰いだ時にも似たようなことを仰っていましたから。ただ……熱量は間違いなく上がっていますわね」
熱量ねぇ……まぁ、友人に言われてって言ってたものね。その人と未だに繋がりがあるなら、そりゃ熱量もどんどん上がる。
私はため息をついて、腕を組んだ。
「でも妙よね。なんでセンタルハーナなのかしら」
距離的には近いけど……ソウテン王国は、海を挟んだ先にある〇〇王国の方が国交は多い。
原作じゃ、ライスター王国からの交換留学生が攻略対象にいたしね。
私の疑問に、アイマスクを取ったレイラちゃんが上体を起こしてこっちを向いた。
「そりゃあ、センタルハーナ共和国がダンス世界を最初に開始した国だからじゃないですか?」
「「はぁ!?」」
私とカーリーの声が重なる。あの馬鹿げた世界を最初に始めた国ですって?
言われてみれば……ダンプリのオープニングで「周辺諸国が取り入れた平和外交を」とか言ってたわね。さっき言ってた交換留学生も、ライスター王国にこの文化を取り入れるか判断するって言って来てたし。
「……えっ、かなり嫌な予感がするんだけど」
「そうですねぇ。わたしも似たようなことを考えてますよ」




