5話――懐悪・悪折⑤
「その組織ってのは何なのよ」
「何って言われても、オレもよく分かんないんすよね。オレは組織の改造人間だと初期型っすから」
初期型ってあんた。なのになんで知らないのよ。しかも改造人間って割にはジェイソンみたいに特殊能力があるふうでも無いし。
私の困惑顔を察したのか、マリンが手と首を勢いよく振る。
「そ、そうは言ってもあれっすから。オレが組織にいたのってまだ物心つく前なんすよ。理屈はよく分からないっすけど、オレは優秀な母体に優秀なタネを蒔いて作るって感じだったんで。そんで後は薬をドバドバ使って身体能力と魔力を上げる、みたいな。だからジェイソンみたいな特殊能力は無いんすよ」
なるほど。
改造人間というよりもデザイナーズベビーなのね。それならあの異様に高い身体能力も納得がいく。
「いや、オレはまぁアレなんすけど……組織に作られた奴以外にオレ、力負けしたこと無いんすよ。イザベル様、なんでオレより脚力あるんすか?」
……冷静に考えたら、デザイナーズベビーより身体能力があるこの体ヤバいわね。流石は公式チート、『ダンプリ』界のおやこあい。
「最高傑作の十三体の一人って言ってたし、ああいうのが後十二人いるのね」
ジェイソンを倒せたのは初見殺しの部分が大きいし、出来ればもう戦いたくない。まぁここから先はそんなに戦うことも多くないだろうけど。
私が渋い顔をしていると、カーリーが首を傾げる。
「あれ? でもジェイソンはどう見ても魔道具と合体してましたよね。アレも同じように作られてたんですか?」
「え、あいつって魔道具と合体してたの?」
改造って言っても体をバッタとかにするんじゃなくて、そんな雑な作りだったのか。
「ボクは魔法使いであって、魔道具は門外漢なんで詳しくは無いですけど……あの魔力の動き方は魔道具でしたね」
この言い方、大学の教授発表会を思い出すわね。なにが専門外なのよ何が、というかその場に呼ばれてる時点で素人じゃないのは確定してんだからそんな言い方しないでよ。
私に苦い記憶がフラッシュバックしているのもおかまいなしに、カーリーは続ける。
「一方、マリンさんは『極めて優秀なだけの普通の人間』です。この差はなんなんでしょうか」
「なんか一昨年くらいに『賢者の石』とかいうのを手に入れてから、研究の方向がシフトしたみたいっす。そんで親父……オルカは大金つぎ込んでたみたいっすね」
「「『賢者の石』!?」」
私とカーリーが同時に聞き返す。そんなおとぎ話にしか出てこないようなアイテム、『ダンプリ』のゲームじゃ一度も見たこと無いわよ。
「あれって最高位の錬金術師にしか作れないチートアイテムですよ……しかも錬金術師なんていまどきいませんし」
「あらそうなの」
「イザベル様、大学で『物理、生物、化学の三分野を同時に専攻』した奴が全部の分野で博士号取れると思います?」
「不可能じゃない?」
勉強量が絶対に足りないだろう。
「錬金術師ってそういう感じなんですよ。それくらいして初めて錬金術師のスタートラインなんです」
なるほど、そりゃ無理ね。
「まぁそれで今は改造人間をガンガン作って、売ってるらしいっす。さっき姐さんたちが一蹴した奴らの中にも何人か改造人間いたんすよ。まるで相手になってなかったっすけど……」
「そりゃ私たち、最強だから」
「悪役令嬢もので片方闇落ちしそうなセリフが出るとは思いませんでしたね」
「あんたのことは闇落ちさせないわよ」
「既に闇落ちしてそうなイザベル様が言うと説得力無いですねー」
こいつ一回締め落としてやろうかしら。
というか、悪役令嬢且つ内政物なのにヤクザをしばきに行くって……ジャンルが迷走してるわね。仕方ないことだけど。
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