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39話――沈黙のイザベル②

279部分


「失礼するよ」


 カチャ、と扉が開いて紅茶を持って入ってくるセイムス男爵。

 というか、普通に使用人がいるのになんで自分で持ってきたのかしら。


「ああいや、良い茶葉を手に入れたんだけれども、家の者に渡すのを忘れていてね。ついでにぼくが持ってきたわけさ。勿論、淹れるのはちゃんと家の者がやってくれたから味は保証するよ」


 私の問に笑顔で答えてくれるセイムス男爵。テーブルに置かれたお茶に手をつけ、念の為にクスリの使い魔、「ラリー」を出してみる。


(……反応なし、クスリは使われてないわね)


 ここまで警戒する必要も無いかもしれないけど、念の為ね。

 私が魔法を使ったことに気づいて無さそうだし、あんまり鍛えていないからセイムス男爵は戦えるタイプじゃないみたい。

 いろいろと目の前の男爵から探ろうとしていると、彼は自然な笑顔で紅茶を勧めてきた。


「イザベル、冷めないうちにどうぞ」


「ありがとうございます、いただきますわ」


 こちらも笑顔を返し、紅茶を一口いただく。いつも飲んでいる物と違ってフルーティーな香りと味わい。

 あんまり詳しくないけど、コレってたぶん外国のお茶じゃないかしら。


「こちらのお茶、どちらで手に入れられたんですか?」


「そういえばイザベルは紅茶が好きだったね。これは海の向こうのセンタルハーナ共和国から輸入したものだよ」


 センタルハーナ共和国って言ったら、「国民全てが平等に」がモットーの軍事国家だったわね。歴史も長くて、うちの国――ソウテン王国とも国交がある。

 お茶だけでなく様々な料理も有名な国で、美食家は旅行に行って美味しい物を食べてくるのがステータスだとか。


「輸入ものですか。それは随分と珍しいものを」


「最近はそこまで珍しくも無いさ。最近……と言ってももう六年も前になるけれど、知り合いがセンタルハーナにツテがあってね。こうして色々融通してくれるのさ」


 センタルハーナと繋がりがある……と。あの国って(っていうかソウテン王国以外の国って)原作にでてこないからイマイチよく知らないのよね。


「センタルハーナ共和国は良い所だよ。ぼくも何度か行ったことがあってね。ソウテン王国はもっと彼の国を真似すべきだと思う」


「そうなんですね」


 文化から気候、人口、宗教、なんにもかんにも違う国を真似してどうするのよ。

 学んで自国に合わせてチューニングするならまだしも、そのまま真似しても良いことなんてなんにも無いわ。

 ……とは言わず、私はこくんと頷いておいた。こんなところで議論したって有益な物は生まれないでしょうしね。


「美味しい紅茶ですし、家の子達にも飲ませたいので……よろしければ後で分けていただけますか?」


「もちろんだよ。明日出る時には包ませておくね」


 話しを取り敢えず逸らしホッとする。まぁこの紅茶美味しいしね。

 お茶請けにクッキーとか欲しいけど、それは求め過ぎかしらねぇ。


「そういえばイザベル、少し小耳に挟んだんだが……」


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