39話――沈黙のイザベル①
昨日は祝日だったため、完全に頭から抜けておりました。
そしてちょっと話が重かったせいで、少し修正していたため更新が遅くなりました。
というわけで、お話の続きです。どうぞよろしくお願いいたします。
「ようこそ、久しぶりだねイザベル」
「ご機嫌麗しゅう、セイムス叔父様」
さて、私達が屋敷へ着くと――早速、セイムス男爵が快く迎え入れてくれた。まさか玄関にいるとは思わなかったから少々驚いたけれど、ちゃんと深層の令嬢っぽい笑みを浮かべてお辞儀をする。
「以前会った頃よりも、更に美しくなったね。オーブリーさんにそっくりだよ」
だからお母さんに会ったこと無いから、その名前を出されても困るんだけどね。
「ありがとうございます」
取り敢えずお礼を言って、微笑んでおく。
セイムス男爵はニコニコとした人の好さそうなオジサンだ。
中肉中背、普通のおじさんって感じ。良くも悪くも貴族らしいシャンとした格好で、髪の毛はピッチリとオールバックになでつけてある。
「ではこちらへ」
挨拶もそこそこに、私はメイドさんの案内で応接間の方へ。カーリーたちは使用人室の方に通されたみたいね。
部屋に入り、ローテーブルを挟んでソファに座る。
「アザレアの宅に比べると狭い屋敷だから恥ずかしいけれど、今日はゆっくりしていってくれ」
確かに我が家と比べると、二回りほど小さい屋敷。とはいえセイムス男爵家は領主では無いから、あまり大きい屋敷があっても維持に困るだけだろう。
「そんな、うちは広いだけですもの。この屋敷のように品の良い美術品もありませんし、むしろ勉強させていただきたいですわ」
「キミにそう言われると嬉しいよ。晩御飯にはまだ早いから、お茶でもどうだい?」
「ええ、ありがとうございます」
笑顔で返事すると、セイムス男爵は席を立ったので……少しだけ気を緩める。
するとスゥッとカーリーが透明化を解除して私の横へ。
「相変わらずお上手ですね、令嬢のフリが」
「そりゃあ、誰がどう見ても立派な深窓のご令嬢ですもの」
「最近の深窓のご令嬢はシックスパックなんですね」
「スタイルの維持は乙女の嗜みよ」
そう言いながら、椅子の背もたれに体重を預ける。
そんな私の肩に顎を乗せるカーリー。
「マリンくんちゃんさんが軽く探ってましたけど、特に癒着とかは見当たらなかったようです。今はユウさんとシアンさんが、使用人室で聞き込みしてます」
「あの二人は気に入られそうねぇ」
「ユウさんは主に女性から、シアンさんは男性からの人気が高いですね」
流石は天然女たらしと、政治力だけで中ボスまで成り上がった女。
「女たらしはイザベル様もじゃありません?」
「私は天然じゃないもの」
「よりタチが悪いじゃないですか」
よく私がタチって分かったわねぇ。
そんな下ネタは置いといて、私はふむと考える。
(それにしても、一層意味が分からないわねぇ)
最初に考えてたのは、あの盗賊がセイムス男爵と繋がっているのではないかということ。
少し無茶な考えではあるけど、一番現実的にあの盗賊がわざわざ自治地内でシノギをやっていた理由に理屈がつく。
理由を暴く必要は無いけど、分からないと気持ちが悪い。
「まぁ続報待ちね。結局今夜はこの家にいるんだし、そんなに急ぐ物じゃないわ」
「分かりました。っと、そろそろ来ますね」
足音が聞こえて来たな――と思った瞬間、彼女はそう言ってすーっと透明になる。いつも思うけど、本当にこの子の魔法は便利ねぇ。




