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38話――からかい上手のイザベル様⑥

「痛い痛い痛いですわっ!」


「ほ、ほら喋り方も……」


「アンタは火に油注ぎたいの? 喧嘩売ってるなら買うわよ」


 とはいえ、実際貴族始めたのは数ヶ月前なんだから仕方ないといえば仕方ないんだけど。

 私はなんとも言えない気分になりつつ、拳を手のひらに打ち付けた。


「じゃあ案内してちょうだい」


「は、はいこちらです!」


 オッサンの先導に従い、馬無し馬車をその辺に停めて歩き出す。ちなみにレイラちゃんは飽きたのか馬車に戻った。

 どうせ誰かが見てないといけないからいいんだけどね。


「どんな魔物だったのよ」


「どんなと申されましても、一瞬の出来事でしたから……馬車が破壊されて息子が連れ去られたのが見えただけで」


「それは妙だね」


 話しながらずんずん進むオッサン。彼の発言に何か気になることがあったのか、ユウちゃんが口を挟む。


「息子さんが連れ去られた所を見ているなら、せめて魔法で連れ去られたのか腕で持たれたのか口で咥えていったのかくらい分かるだろう?」


「何分素人ですし、咄嗟だったもので。こちらです、こっちの方に走っていきました!」


 そう言って指差す方には、誂えたような穴蔵が。よく見ると穴蔵には足跡があり、四足歩行の獣形の魔物が入っていったかのようになっている。

 そこまで言うと、オッサンは私達の背後に回った。


「お、お願いします! 息子を、息子を助けてくだーー」


「ぼくは弱者を装う人間が嫌いでね」


 ーースパパパン!

 ユウちゃんの抜いた剣が、オッサンの服をビリビリに斬り裂いた。そして中から出てくるのは明らかに素人じゃない傷跡と、仕込みナイフ。

 ユウちゃんは回し蹴りでオッサンを地面に転げさせると、その上にどっかりと腰をおろした。


「げぼばっ!?」


「騙し討ちは構わない。盗賊にモラルやプライドを期待していないからね。ーーでも、弱者を装うのと弱者を利用するのは別だ」


 ……な、なんかユウちゃんの逆鱗に触れちゃったらしいわね。彼女は汚物でも見るかのような目でオッサンの胸ぐらを掴んで持ち上げた。


「ひぃ、ひぃっ! お、お前らやっちまえ!」


 オッサンがそう叫んだ瞬間、周囲から一斉に盗賊たちがでてきた。

 全部で五人、数が少なすぎる気がするわね。


「ディグ・シーナリー」


 しかしユウちゃんが地面に手をつくと、隆起した岩が盗賊たちを吹き飛ばした。

 あの剣、相変わらず強いわねぇ。抜かなくても地面を操る能力が使えるのね。


「なっ、なっ……」


「ぼくの剣は女神に捧げたからね。貴様のようなゲスに制裁を加えるのは、あくまでぼくの我儘」


 そう言いながら拳を振り下ろすユウちゃん。パウンドでオッサンの顔が陥没した。


「だから剣を抜かずにズタボロにするよ」

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