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38話――からかい上手のイザベル様③

 泣いてるシアンの頭をなでていると、「そういえば」とユウちゃんが口を開く。


「今から会いに行くのは、セイムス・ドールトン男爵だよね。ぼくは会ったこと無いけど、女神はあるのかい?」


 イザベルの母の従姉妹の、旦那。それがセイムス男爵。

 血は繋がってないけど、昔から割と気をかけてくれているらしい。

 もちろん、私は会ったことないし――原作のゲームで見たことが無い。


「シアン、アンタは?」


「勿論、お会いしたことは何度もありますわ。特によく海には連れて行っていただきました。……だから、叔父様の前で海に行ったことは無いなど言ったら怪しまれますわ」


 なるほど、良かった聞いておいて。

 ……これ、以前関係あった人と喋るときは、リアルタイムでシアンと通話できるようにしたほうがいいかしら。インカムとかで。

 シアンは私の膝の上でコロンと寝返りを打つと、その横……空いた方の膝にカーリーが寝転ぶ。


「膝は譲りませんよ」


「ならわたくしはカーリーのお腹で我慢しますわ」


「ちょっ、ぶぅ!」


 カーリーのお腹にダイブするシアン。仲が良いわねぇ、あんたら。


「い、痛いですよっ!」


「痛くは無いでしょう? そっと寝転びましたわ」


「心が痛みました」


 無茶苦茶な論法を使うカーリー。そしてそのまま私に抱きつくと、上目遣いでこちらを見てきた。


「でもイザベル様、実際セイムス男爵との会話は気をつけないといけませんよ。あの人、領地騎士団を一度解体した時に凄く協力してくれた人ですから」


「あら、そうなの。えらくアンタ好かれてたのね」


 カーリーの上でゴロゴロしているシアンにそう言うと、彼女はこてんと首を傾げた。


「その件なんですけども……確かに、わたくしは好かれていましたがあの時は変だったんですわよね」


「というと?」


「政治は数ですわ。そして、数を集めるのに一番大事なのは根回し」


「そうね」


 相変わらず、政治関連に関しては現実的なことを言う。正確には、政治的手腕で物事を通すことに関しては、か。

 政治は出来るのに経済がボロボロとか……サポートする人間がいなきゃ詰むタイプの領主ねぇ。


「両親に効く意見とそれを持つ人、騎士団に意見を通せる人、そしてウキョートや第一騎士団に話を通せる人などかなりの人数に手を回して根回しをしましたわ」


「その結果、自分の領地を追い詰めるんですから本当にアホですよね」


「シャラップですわカーリー!!」


 カーリーのお腹をぐいっと抱きしめてーーベアハッグをするシアン。

 いくらアホでも本当のこと言われたらそりゃ怒るわよねぇ。


「その時、叔父様はわたくしの話を聞いたら急に協力的になったんですの。そしてウキョート関連の根回しは大分やってくださったんですの」

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