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38話――からかい上手のイザベル様①

「うーみーはー広いーなー、大きーいーなー」


「いやイザベル様、あれは川ですよ。マータ川です」


「知ってるわよ、流石に。はい、緑の四」


 というわけで、数日後。

 私はジーナにお返事を出した後に、レイラちゃん作の馬なし馬車マークIIIでワナガーカへ向かっていた。

 ワナガーカへは王都ウキョートを超えて行かなければならず、また一日では着かない。

 そのためウキョートで一晩、懇意にしている貴族の家に泊めてもらわねばならないため……今こうして、ガラガラと馬車を走らせている。


「しかしまぁ、広い川ですわね。マータイサにもラーア川とかありますけれど、どっちの方が広いんでしたっけ。えーと、赤の四。ウノですわ」


「ラーア川の方が広くありませんでした? あ、ドローツーです」


「流域面積も長さもラーア川の方が広いですよー。はい、ドローツーで」


「レイラちゃんは物知りだね。古くは川下りでウキョートへの安全な路とか言われていたっけ。えーと、ドローツーでいいのかな?」


「今じゃあ裏の人間が、ウキョートの海に沈んでわからなくなるからっつって死体を流すのによく使うらしいッスけどね。ドローツーあったッス」


「物騒ねぇ……ああ、でも私海見るの初めてだわ。マータイサもマングーも海無かったし。はい、ドローツー」


「ぜっっっっっっっっっったいにイカサマですわぁ!?!?」


 吠えながら、涙目で十枚引くシアン。バカねぇ、こんなわかりやすいイカサマするわけないじゃない。私は河拾いしたけど。

 ちなみに我が家はローカルルールなので、ドローツーにドローツーを重ねても良い。ドローツーにドローフォーはいいけど、その逆はダメ。

 でもウノは良いわねぇ、知らなくてもルールがわかりやすいし。


「でもイザベル様、海を見るのが初めてって……幼い頃旅行とかしかなかったんですか? 緑の三」


「とはいえ、わたしも見たこと無いですよ? 緑の二」


「赤の二」「赤の六」


「ぶっちゃけ、庶民は一度も村から出ずに終わることも多いのよ。スキップ」


「あっ……」


 五枚も構えていたシアンが、悲しそうな顔になる。甘いわね。


「それなら、ワナガーカに着いたら水着で海に行きたいですね。青のスキップ」


「良いね、それなら今日水着を新調するかい? 黄色のスキップ」


「いいじゃない! ちょうどシアンもいるし、夏の水着回よ! 黄色のリバース」


「いじめですわっ!!! わたくしのことをいじめていますわっ!!!」


 ウノを叩きつけ、私に殴りかかってくるシアン。本当にこの子はいじめ甲斐があるわねぇ。

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