37話――ふしぎ友誼⑤
「はい、理解いたしましたわ」
頷くシアン。ジーナの攻略にあたって、イザベル本人の協力が取り付けられたのは大きいわね。
(箱もあるし、資金もそこそこ確保出来そう。まぁまだ借金は遺ってるけど)
後はジーナの所に行って、上手いこと言って生き残りの騎士を連れて帰ってくるだけのこと。
ただ少し心配なのは、ジーナって原作のゲームだともっと色々考えてる子だけど、この文面を見るにただのアホの子なのよねぇ。
もし本当に文面通りのアホの子なら、交渉がすんなり行くとは思えない。突飛なことを言われたらどうしよう。
……なんて私が嘆息すると、シアンも腕を組んでやれやれとばかりに首をふる。
「別に悪い子では無いんですけれども、私以上に甘やかされて育ったのが丸わかりというか」
「アンタが言うと説得力があるわねぇ」
「余計なお世話ですわっ!」
まぁ原作のイザベルは甘やかされたなんてレベルじゃないけど。
ただそれにしても、原作とあまりにもキャラクターに乖離がある。
「というか貴女、なんでジーナを知っているんですの?」
「ああ、アンタにはまだ言ってなかったっけ」
我が家では基本的に、私とカーリー、そしてレイラちゃんが転生者であることは共有している。昔読んでた転生モノだと、割とそれを隠すことが多かったけど……私たちは原作知識を前提に行動してたりするので、お互い知ってた方がスムーズに進むのよね。
ただ『原作』って概念だけは伝えづらいから、そこだけは『預言書』って言い換えてるけど。
「ってわけでカクカクシカジカ」
「……頭おかしくなっちゃってるんですの?」
真正面からぶった切ってくるシアン。
……そういえば、原作知識を共有しない作品の殆どってこうして頭がおかしくなったって思われるからだったわね。
他のお話の整合性に納得しつつ、私は笑みを作った。
「いいから信じなさい。じゃなきゃ話が始まらないわ」
「強引過ぎますわっ! 怪しい新興宗教でももう少しごまかしますわよ!?」
「最近はシアンちゃんがツッコミを入れてくれるから会話が楽だね」
「ツッコミを放棄しないでくださいまし!?」
ユウちゃんがのんびりお茶を淹れながら笑う。言われてみれば、こういう大きな声でツッコミを入れる系キャラってたまーにカーリーと私が担当するくらいだったものね。
「でもイザベル様。流石に証拠も見せずに信じろは無理がありませんか?」
「でもマリンもユウちゃんも信じてくれたわよーーって、カーリー。いつの間に?」
瞬間移動して現れたのは、バスタオルを体と頭に巻いたカーリー。ふんすと平らな胸を張りやれやれと首を振った。
「だってそのお二人は、殆どイザベル様の信者じゃないですか」
いや、流石に二人共宗教のごとくイエスマンってわけじゃないと思うけども。
ユウちゃんも心外だったのか、やれやれと首を振った。




