37話――ふしぎ友誼①
「だーかーらー! ボクは別に困ってないんですってば!」
「ダメですわカーリー! そんなに足を出す格好ばかりして! まだそんな年齢じゃありませんわ! ほら、こっちの格好の方が可愛いですわよ!」
「いーやーでーすー! こっちのほうがイザベル様が見てくれるんですよ!」
「知りませんわ! あと貴女、また昨日の夜はお腹を出して寝ていたでしょう! ちゃんとタオルケットはかけなさいとアレほど……!」
「しーりーまーせーんー!」
さて、シアンが我が家に住み着くようになってはや三日くらい。今日も今日とて、屋敷から彼女らが仲良く走り回る音が聞こえてくる。
「しかしまぁ、シアンはお母さんみたいね」
我が家のお母さんといえばカーリーだったのだけど、あの日からとにかくシアンがカーリーのお世話を焼く。
特に服装に関しては本職のこともあり、一家言あるようで……彼女がローブ姿のみで過ごそうとすると、TPOに合った格好をさせようとする。
「今までカーリーちゃんが僕らのお世話を焼いてくれていたからね。彼女にも色々あったし、あんな風に口うるさく言われるのは初めての経験なんじゃないかな」
微笑ましいものを見るような目になるユウちゃん。まぁ確かに、ネグレクトされてたっぽいし……あんなお母さん的なからまれ方したことないのかもね。
「捕まえましたわぁあぁぁあ!! さぁ、昨日も言った通り髪の洗い方からですわ!」
「ぎゃあああ! 悪霊退散、悪霊退散!」
「誰が悪霊ですの!」
カーリーは捕まったらしい。昨日はフォークの持ち方でやいやい言われていたけれど、今日は髪の洗い方なのね。
……というか、カーリーから習ってたテーブルマナー、今になって不安になってきたわ。大丈夫かしら。
「カーリーちゃんのテーブルマナーは間違ってなかったよ。ただ全部あれは貴族のマナーだからね。使用人や普通の女の子のマナーとは少し違う」
「あら、やっぱり差があるものなのね」
「些細なことではあるけどね。……でも女神、いいのかい?」
「何がよ」
ニコニコと、少しだけイタズラっぽい笑みを浮かべて……私の後ろから、おっぱいを押し付けるようにして抱きついてくる。
「いや、カーリーちゃんが困ってるんじゃないかと思って、さ。止めなくていいのかい?」
「別に良いわよ。ユウちゃんだって、わかってるんでしょ」
カーリーは指を鳴らすだけで、物と物の位置を入れ替える魔法を使える。それを使えばシアンを飛ばすことも、自分が逃げることも思いのままだ。
アレだけ騒いで逃げたり出来る彼女が、今更シアンに萎縮しているとも考えられない。
つまり――
「ま、許しはしてないんだろうけどね」
「そうだね」




