5話――懐悪・悪折③
「強さ、気高さ、美しさ! それだけじゃない、あの圧倒的なまでの容赦の無さ! 乗り込んでくる胆力! 人を人とも思わぬドSっぷりはまさに女傑! 男が漢に惚れるっていうのはこういうことだ! 姐さん、オレを弟子にしてください!」
男じゃないわよおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
そう叫びたくなる気持ちを抑え、思いっきり首を振る。
「な、なに言ってんのよあんた」
「そもそも、弟子って何をするんですか……?」
「オレも貴方みたいな悪党に……! 小物じゃない、本物の悪党になりたいんです!」
なんか変な方向に尊敬されている!?
「い、いやいや……止めた方がいいんじゃないですか……? イザベル様、結構我儘ですよ?」
カーリーが困惑した表情のまま、マリンに話しかける。私はどっちかっていうとアンタの我儘に付き合わされている立場な気がするんだけど。
しかしマリンはめげない。それどころかキメ顔で歯を見せて笑った。
「むしろ、それがイイ」
ダメだこいつ、早く何とかしないと。
「オレはさっきあんたにぶっ飛ばされて思ったんだ。自分より強い女に殴られるのも……イイって」
変な方向に目覚めてる!?
これから先、人手が大量にいるし、お金も必要なのだ。ここで変な……それもヤクザあがりの人間を雇うわけにはいかない。いくら顔が女の子っぽくてかわいいとはいえ。
「マリン、弟子って言うけどね……」
断ろうとして、ハタと思い直す。
お金はいるが、それ以上に人手もいるのだ。そう考えると、こいつは割と使えるんじゃないか。
カーリーが私の目を見てどうすべきか問うてきているので、私は咳払いしてから頭を下げているマリンの頭を踏みつけた。
「えっ」
「うっ……」
ちょっと嬉しそうな声を出すマリン。横でカーリーがドン引いているけど、私はスルーしてマリンに話しかける。
「弟子ね、いいわよ。その代わりあんた、明日までに百万ミラ持ってきなさい」
「百万……ですか……!」
何言ってんだあんた、みたいな目で見てくるカーリー。私はやっぱりそれを無視して、踏みつけている頭に力を加える。
「あのねー、私はこれでも領主よ。あんたみたいなヤクザあがり、金を払ってもお断りなのよ」
「そ、そんな! オレ、何でもやります! なんでもできます!」
顔をあげるマリン。私はその顔を踏みつけ、ニヤリと笑った。
「ん? なんでもやるって言ったわよね?」
「え、は、はい! なんでもやります!」
「そう。――じゃあ、特別に無料で弟子にしてあげるわ。しかもご飯は食べさせてあげる」
私が足を外してやれやれといった雰囲気でそう言うと、マリンは嬉しそうに笑顔を見せた。
「本当ですか!?」
「もちろん。……その代わり、必ずこっちが指定した服装をすること。いいわね?」
「制服ってことッスね、お安い御用です!」
やる気に満ちた表情で拳を握ったマリン。うむうむ、若い者にやる気があるのはいいことね。
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