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番外編 前編 夜を駆ける②

「色管理? んなことしてないわよ。オーナーがしっかり見に来てくれるって思ったら、やる気が出るかなって思ってやってるだけなんだけど」


「……まぁ、姐御に褒めてもらおうと思って皆やる気出すから、いいっちゃいいんですが……」


 褒められるより、お金を貰えたほうが嬉しいでしょうに。

 私は資料整理と数字の入力を終え、帳簿にあった計算ミスを全部修正してカインに返す。

 彼は直されて完成した資料を見ると、ぐんにょりとした顔になった。


「使わせて貰ってるから、お礼ね」


「姐御は相変わらず残酷だ。仕事のやる気が削がれる」


「でも現場で女の子管理したり、アホな客を弾いたりするのはアンタのほうが得意でしょ。適材適所よ」


 むしろこんな簡単な帳簿で褒められる方が嫌味よ。売上って言ったって、プレイ内容と時間くらいしか値段の差が生まれないんだからこのお店。

 私は残りの化粧をちゃっちゃと済ませ、店長室から出ていく。すると、色とりどりの衣装を着た女の子が迎えてくれた。


「イザベル様じゃーん」


「わぁー、来てくれたんだぁ」


「やったやったぁ! ねぇイザベル様ぁ、うちの部屋来ない? サービスしちゃう」


 まるでお花畑かのようなカラフルさね。私は苦笑しつつ、近づいてきた子たちの頭を撫でる。


「ほらほら、アンタ達。ちゃんとお部屋戻んなさい? お客さんを待たせちゃダメよ」


「「「はぁーい」」」


 返事をした女の子たちは、そのまま部屋に戻る。あの子ら、本当にお客さんをほっぽらかしてこっちに来ていたのね。

 ほんの少し呆れていると、残った子のうちの一人が遠慮がちに私の前に出てきた。


「あの……い、イザベル様。お久しぶりです」


「あら、アンタは……カムカム商会の地下にいた子じゃない。シルクだっけ? 良かった、働けるようになったのね」


 彼女は私とカーリーが解決した最初の事件、カムカム商会の地下でクスリ漬けにされていた子の一人。あの場所にいた子たちは皆廃人になっちゃってたけど……レイラちゃんと私で頑張ってクスリを抜いて、リハビリをさせることで大体の子たちが復帰できるようになったのだ。肉体的には。


「ごめんね、レイラちゃんの薬がもっと長く記憶を消せたらいいんだけど」


 彼女は確かに万能だけど、流石に記憶を自由に操るとはいかない。彼女の薬で消せるのは最大三か月程度で……彼女のように、三か月以上あの場に囚われていた子はトラウマに苦しめられていたのだ。


「いえ、あそこで助けていただけられなければ……私はとうの昔に死んでいたでしょうから」

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