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番外編 前編 夜を駆ける①

ちょっと章の構成をミスっちゃったので、一旦番外編を挟みます。すいません……。

第四章の名称を変更して、そののちに第五章を開始しようと思います。


何卒宜しくお願い致します~。

「今日の仕事もおーわりっ」


 レイラちゃんに作ってもらったボールペンを放り出し、思いっきり伸びをする。時刻はまだ夜の十時半――今日は割と早く終わったわね。

 昨日は日付が変わるまで仕事をしてたから、週末くらいは仕事少な目でいいだろう。


「それにしても肩が凝るわね」


 いつもならカーリーを呼んでお茶をしたりするのだけど、今日は庭の手入れをしたとかで寝てしまっているし……ユウちゃんとお話しした後添い寝でもしようかしら。

 ……なんて考えながら、私は既にお忍び用の服に着替えている。タイトなスキニージーンズに、おへそが出る位置で結んだ白いシャツ。いつもは邪魔だから一つに結んでいる髪を降ろし、夜でも使える赤いサングラスをかける。

 十六歳の肉体だから、お化粧は色付きリップを塗るくらい。念のため化粧直しの道具と、お財布……そのほか女の子の必需品を突っ込んだ小さいショルダーバッグを持って、窓を開け放った。


「肩が凝るのは堅苦しいお仕事をしていた証拠! ……ってわけで、ちょっと行ってくるわね~」


 誰に言うでもなくそう宣言すると、私は窓から思いっきり空へ向かって跳ねた。この肉体だと、一息に屋敷の外へ出られるから楽だわ。

 いくつかの木を足場にして空を駆け、街まで急ぐ。街についてからは今度は屋根の上を走って繁華街の方へ。


「よっし、着いた。おっじゃまするわよー!」


 天板を無理矢理開けて、部屋の中へ。そこはカムカム商会が運営する娼館の一つ――『アジカン』の執務室だ。このお店を任されている店長のカインは、うんざりした様子で肩を落とす。


「姐御……またですかい」


 カインは帳簿をつけているところだったらしい。煙草を吹かしている彼の横から帳簿をひったくり、横に置いてある資料に目を通す。


「またって、今月まだ四回目よ?」


「姐御が来ると女の子がその日仕事にならんのですわ」


「そうなの? いっつも女の子たちを労ってるだけなんだけど。今月もこのお店、売り上げが良いし」


 私が街に出る時は、いくつかの娼館でいったん休憩して荷物を持ったりお化粧直しをしたりする。建物から出ずに空から街に降り立つと、騒ぎが起きてカーリーたちにバレる危険があるからね。

 私が書類を全部読み終えて横に置くと、カインはため息をついた。


「オッサンの相手してたら急にこんなキレイどころが出てきて、自分のこと褒めてくれるんすよ? 色管理してる野郎よりよっぽど姐御の方が色管理してるッスよ」

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