35話――デンデデン⑦
241部分
本格的に嫌そうな顔をする根暗女。しかし隣の金髪女が、ペイワンをじろっと睨みつけた。
「それが人に物を頼む態度? アンタの健康なんてなんら知っちゃこったないんだけど」
「ひっ、わ、分かりました! お願いします、助けてくださいお願いします!」
「……じゃあ、はい」
手を合わせて懇願すると……根暗女は、その辺の剣を持って金髪女に渡した。そして彼女はペイワンを見ると――一瞬にして、手足を切断した。
再度芋虫状態に戻り、地面に落ちるペイワン。そしてその傷口から、再び新しい手足が伸びてくる。
「えっ、えっ、あっ……!?」
「自力で斬り落としてください。運が良ければ、薬の効果が切れた時に……ちょうどいい大きさになると思います」
「う、運って!? なんとか、なんとかしてください! お願いします、お願いします!」
ミシミシと伸びる手足を何とか折りたたんで土下座して、彼女に懇願するが……冷たい目で根暗女はため息をついた。
「いや知りませんよ、データは取れましたし。――ああ、もうだいぶ伸びてきちゃいましたね。伸びすぎると切りづらくなりますし、自分で斬るときはそれくらいの長さで斬るのがおススメですよ」
はい、と剣を手渡された。伸びる手足――先ほどの奇形を思い出し、恐怖を覚えたペイワンは足に剣を振り下ろした。金髪女ほど綺麗に切れるわけもなく、激痛に耐えながら何度か切りつけて……やっと足を斬り落とす。
そしてまた、生えてくる。
「あっ、あっ……!」
「他のはどうする?」
「ダイヤにしちゃいます」
そう根暗女が呟いた瞬間、部下がいきなり圧縮され、まるで小さい箱に無理やり押し込まれたようにしわくちゃになっていく。
「うぎゃあああああああ!!」
「ひぃっ、やめっ、あっ、あっ、あっ……あべしっ!?」
断末魔の声を上げながら、逃げ出そうとする部下たち。しかしそいつらは例外なくぐちゃぐちゃに押しつぶされて生き……そして、コロン、と宝石になってしまった。
人が、ひとりでに宝石になってしまった。
「やっぱり、人を宝石にするのは結構面白いですね」
「えぐいわね、アンタ」
めのまえの、この、ねくらおんなが……。
あそびで、ほうせきに――
「うわぁああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?!?!?!?!!!!!!」
「あー……発狂しちゃいましたかね?」
ぶかが、ほうせきになる。
てが、のびる。
あれ?
おれ、なにしてたんだっけ。
ああ、そうだ……。
あしを、てを……きらないと。
「それじゃあいきましょうか」
どうしよう、どうしよう。
またてがのびてきた。
きらなきゃ、きらなきゃ。
おれのてあしを、きらないと。
「――今のアンタ、足拭きマットみたいねぇ」
なぁに、それ。
おれは、てあしをきるんだよ。




